自慰戦場のアリア ※ゲームの西エンド後 厨二全開 がちがちがち。 がちがちがちがちとカウンターみたいに今いる人間以外の生き物の数と同じ位喧しく鳴る。骨を打つ様な音だった。身体が馬鹿みたいに軽いのはスーツの所為だけじゃあ多分、ない。コーヨウ?コーコツ?総ての元凶コーキシン?何だって良いさ。がちがちがちがち。今日は大漁で指が追い付かない。のに、音が止まない。この何割かは俺のじゃない。 「……っと、やっべ」 俺より一回りでかい奴の拳が影を作って落ちてくる。誰かがこの所為でぐっちゃぐちゃになったのがさっき横目で見えた。でも止まらない指。トリガーを引く指。しかし何も起こらない!身体を捻って回避すれば視界反転天地無用。俺の目の真ん中に映るのは、もう一体の、右手の、影で、 (あ、本格的にやっべ) ばちゅんと嫌な音がした。自分の脳天じゃないことを確かめてから少し上を見ると顎から上を失った星人がぐらあんぐらあんと揺れている。とうとうバランスをとれなくなって倒れた巨体は埃と血飛沫をそこら中に広げた。声がする。なんて無自覚! 「おまけに無警戒」 「西」 電子が走る音と色が着いた人間。西丈一郎中学生、俺の先輩。 「ボーナスポイントだからな」 「しょーがねえ」 「しょーがねえなぁどっちだ馬鹿ど真ん中いやがって、一度死ね」 「だって楽しいじゃん、こそこそ周波数変えて隠れてるよりはな」 「あ?」 「あんだよ」 「…………良いや、アホらしい」 「ごめん。助かった」 「ふん」 西は左手に持ったXガンと会話を放り投げた。唸り声がする。二人で振り向けば味方の死に一瞬たじろいだ星人が前以上に憤懣してこっちを睨んでいた。 「もう全部やった?」 「多分ね」 「じゃそろそろいきますかァ」 西の右手にもXガンが握られて、人差し指はもう引き金を引いていた。それが高く掲げられるのを見て俺は小学生の運動会の徒競走を思い出しながら真似をする。左小指も耳に突っ込んでみた。あ、それっぽいななんか。嬉しくなった次いでに云ってもみる。 「位置について」 「は」 「西もやれよ、位置についてぇ」 「……あの世まで?」 「よーい、」 「「どん」」 (ぱん) 一瞬で真っ赤な噴水があちこちに出来る。静かに降りてくる。ちらちらと降りてくる、雪の様な肉、内臓、頭蓋の一欠片、血、脳漿、大脳の一欠片。んでもって降りてくる、高揚、恍惚、総ての元凶。 興奮。 「俺のが多かった」 「馬ぁ鹿俺のが七体多かったね」 「どっから来たんだよその数字」 「タイミングずらして打った」 「嘘吐けこのガキ」 「あ?」 「あんだよ」 「…………やめた、馬鹿らしい」 「まーガンツの採点で解るだろ」 左腕にくっついたレーダーを色々弄る西を眺める。大体一番に転送されるのはこの中坊だ、思っている間にももうこめかみ辺りが消えている。背後で誰かがパニックになってたけど死に損ないに説明してやる気はないし、玄関が開いてることだけ云えば良いや。 「帰った?」 「帰った帰った」 「誰かの忘れもん」 「ないない」 こないだいきなり戻ってこられた時はどうしようもなかった。複雑な造りのスーツなんていきなり着られる訳ないし西なんかあんまり動揺してXガンぶっ放しちゃってさぁ。狭い廊下で死体を跨いで帰るのなんかもう勘弁して欲しい。自重も妥協も今の俺たちなんかには出来ないんだから。 「おーら何勝手に始めてんだ」 「遅ェのが悪い」 「我慢できねぇのは」 「ば、触んな」 「中坊らしいんだけどな」 「いい、いいから、自分で」 「西」 「…………」 「何の為の二人だよ」 加藤も死んだ。岸本も死んだ。北条も実は美人だった北条のストーカーも自衛隊の奴も死んだ。名前すら知らない奴も多くて、そんな他人の中で多くが逝った。実力とか、運とか犠牲とかで今日まで死に損なって、あぁ結局は人間独りなのねなんて諦めて生き汚くなることに決めた。気を遣うのをやめた後の、何もかもを壊すことの気持ちよさったらなかった、奪ったのが命なら背骨に入り込んでいく感覚。ぞくぞくした。生きてる感じがした。それが性的なものだと気付くのは遅くなかった。その為に西がいた。人間じゃないなら尚更躊躇なく、他人事だと笑って殺して血を浴びて、部屋に戻ったら忘れない内に熱を吐き出すこの行為は一年もキャリアの長い先輩から教わったものだ。 「お前服着てくんなよな」 「は?だっせぇだろスーツだけ」 「苦しくないの?こんなさー」 「っん、ぅ」 「ガッチガチにしちゃってさ」 「……玄野、今日喋り過ぎ」 オーダーメイドは融通が利かないし元々がややこしいからなかなか手間だって脱がす身にもなれっつうの。西の足の間は絶景だけど。本人の頭の中は俺でも女でもなくてつい最近の内臓の記憶で一杯だと思うと。それで重ね履きしたズボンの上からでも解る位盛ってる変態でエロエロな年下くんと、俺は今日も生きてる証を捏造する。 「くろ、の」 「何」 「俺さ、本当は」 「本当は?」 「友達、欲しかっ、たんだ」 「お前、が?」 「うん。アクユー、みたいなの」 「…………」 「玄野?」 「ごめんな。なってやれなくて」 「馬ぁ鹿、嘘だっつの」 「だよな、似合わねーもん」 「はは、は。あ、イく」 西は意味があるかないか解らない話をするだけしてから、ぎゅうと縮こまって俺の腕の中で小さく震えた。 「今度お前の」 「え?」 「してやるよ」 「西くん今日優し過ぎ。零点」 「なんだそりゃ」 「ガンツの真似」 「馬ぁ鹿」 体勢を入れ替えるように俺の足に跨がって、西は肩を軽く押して壁に寄りかからせる。何も考えんなと云われてる気がした。それに甘えて目を閉じる。がちがちがち。歌う様な上トリガーの音が頭蓋に響き渡っている。気持ち良いよ。 (110113) 仲良くぶっ壊れてる玄西もえ アスカ可愛いよアスカ |