ハロウィン特設


ノベンバーハズカム


「貧相」
「貧弱」

目を開く。視界に入るのは互いの身体だった。肋骨の少し浮いた腹が呼吸に合わせ浮いては沈む。暗い部屋に二人。シニシズム。試しに、とでも云う様に唇と唇を合わせてみる。指を重ねてみる。足を絡めてみる。

「濡れないな」
「勃たないな」

まぁ俺だしな。諦念だけを抱いて性器から手を離す。幾らやっても併合しない皮膚。解離した世界。知らない世界。平行とは、交わえないこと。

「今何時」
「十一時五十分」
「着替えなきゃな」
「置いてってもいいんだぜ」
「お前も死ぬかもな、そしたら」

長い髪が揺れた。いつの間にか雲を追い払っていた空からの光がより彼女の肌の色を薄くする。そこはかとない甘い匂い。彼は彼女が手際よく黒に呑まれるのを黙って見ている。かちり。時計の針が動くのと白銀の留め金が嵌まるのは同時だった。

「楽しかった」
「もう来んな」
「どうだか。ガンツが気紛れなの知ってんだろ」
「善処しろ」
「ヤキモチか」
「死ね」
「お前も死ね」

彼も寒さに耐え兼ねたのかそこらに散らばった服を手に取って、素早く着込むと立ち上がる。全く同じ身長。自然な眼球の位置。

かちり。

「お」

彼の右頬の直ぐ横を通って彼女に届いた光線。一筋だけが世話しなく彼女を削っていく。死ぬなよ、と唇が動いた。お前に云われなくても。返そうとしても耳は既に転送されていて、狡猾さは僅かに彼女の方が上だった。舌を打つ音だけが部屋に響く。ぷつんと転送を終えた光線がまた壁に吸い込まれて消える。暗い部屋に一人。否、最初から最後まで独りだった。

今日から何かが始まった。彼女は十月を連れて消えた。彼である彼女。自分である彼女。何処に行ったのか。何処にあって欲しかったのか。今日から何かが始まった。彼は終わりを噛み締める。


「……パラレル」


(101031)

ゴースト…幽霊。あり得ない存在の象徴。

以上、二人の西リーズでした







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