僕は潰れました


「考えない方が良いぜ。お互いの為にも」

云って俺は玄野の瞼に口付ける。その裏の女との決別を図った心算だった、だってきっと今玄野の目には色の三原色みたいなジレンマと云い訳とごめんなさいが混ざり合って視界を真っ黒に塗り潰しているに違いなかった。だからやめとけって云ったのにさぁあれ俺云ったっけ教えたんだっけまぁどっちにしろお前の感じてる今が総てだ、一番不可逆だと思っていた生と死をリロードしてしまった俺たちは日常のどってことない後悔に色が着いてしまっている。

「俺のこと嫌いだろ」
「…………」
「協調性皆無だしガンツのこと以外役に立たないし、お前の大好きな胸も無いし内臓に興奮するし」
「…………」
「でもその内臓に気持ちよくして貰ってんの、誰」
「う」

協調性皆無で古参ってだけの薄い胸した異常性欲者を抱く腕に力が入って玄野は果てた。ありもしない罪悪と脱力で意識まで虚ろな癖に手が無意識に頬を撫でる。刷り込まれてんだろ。残念だったな何もかもが似てないパーツで。安心してんだろ。男だし、みたいな、元々零から一にはなれないし、みたいな。壊れた浮気カウンター。

「あぁ、それと男に突っ込まれて感じてるし」
「西」
「野郎なんか子ども産ませる機械なんだよ。だから女より短命だしエラーが起きたっておかしかないだろ」
「西、俺な」
「何だよセックスマシーン」
「お前のこと、好きだよ」
「俺も。俺も俺のこと大好き」

だから哀れな目でそんなに俺のこと見てくれるお前も頬を撫でてくれるお前も気持ちくしてくれるお前も好きだよ。あーあ好きだなんて呪縛の言葉で繋がっちゃったよ俺たち、ねぇどうする?どうしようもないよ。だってもう身体が先に繋がってるし。順番が違うなんてもう遅いし。今度は唇にキスすると俺がまだだと玄野が察して、慌てた愛撫に茶化して大袈裟な位声を出したら本当にいやらしい気分になって直ぐイけた。二人分の二酸化炭素と体液が混じってシーツに浸透する。

「苦しい、か」
「べ、つに」
「……うん、やっぱ俺お前のこと好きだわ」
「何一人確認してんだよ、キモ」

大体好きになってどうすんだよ。彼女と逢ってる時さえ極彩色の後悔がお前を食い千切るんだぜ。どうせ女の代わりにしか思ってない癖に。目を閉じて俺の身体のあちこちから余韻を啄む玄野の瞼を引き裂いてやりたかった。よく見ろよ、なあ。こんなん好きになるとかよっぽど気違いだって。だから俺は俺のこと好きになってやれるし、他人なんか死のうが生きようが無関心でいられるしだからだからだから、俺は一人で平気なの。それなのに。玄野の唇がやけに重い。呪いの言葉が重い。心臓が五月蝿くて煩わしい。気付いてしまえば耐えられなかった。畜生。目か性器か心か知らない。僕は潰れました。


(100923)


愛して欲しい西くん





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