かけひき

「アカイト、本当に俺の事好きなの?」

「好きじゃなかったら、こんな事しねぇよ。」

「いや、普通にイジメでしょこれ。」


アイスの乗ったスプーンを差し出す優しい俺に、生意気にもカイトは首を振る。


「わざわざあーんしてやるって言ってるだけなのにどこがイジメなんだよ。」

「じゃあなんでハバネロアイスに更に一味なんてかけたんだよ!」


まああれだ。好きな子は虐めたいってやつだ。
それにベースはアイスだから甘いかもしれねぇし。


「俺とお前の好きなもの合わせてやったんだろ。むしろ愛の証。だからさあ食え。」

「アカイトがうきうきしてる時はろくな事がないから断る。」


じとっと睨んでくるカイト。
流石に今までのあれやこれやで学習しているらしい。
無理矢理顎引っ掴んで突っ込んでもいいんだけどな。

「なんか悪寒がしたんだけど。」

「気のせいじゃね。」

「じゃあアカイトが先に味見してくれたら食べる。」


・・・・・・。


「言ったな。絶対食えよ。」

「う、うん。」


あんまり食いたくないけど、肉を切らせてなんとやら。
カイトに食わせる為、思い切って舌先で赤いアイスに触れてみる。


「どう?」

「・・・微妙。」


一味が少しぴりっとするが、アイス自体は特別辛くもない。
これを食わせても、俺が楽しくない。


俺はおもむろに一味の小瓶を取って、スプーンの上に傾けた。


「ちょっと!」

「さあ食え。」

にこっと笑ってスプーンを差し出すと、カイトがさあっと青くなった。

「俺は食ったし。食うよな?」

「・・・卑怯者。」

「卑怯はお前のウリだろ。ぐだぐだ言ってねぇでさっさと食え。」


ずいっと更にスプーンを近付ける。
カイトは嫌そうに顔を顰めながらもスプーンに顔を寄せ、口に含んだ。


「・・・っておい!一気にいくなよ!」


スプーンを咥えたまま固まるカイト。


「大丈夫か・・・?」


固まったまま、大きな目がうるうると潤みだした。
やっべ。可愛い。

「ひゃらい。」

「だろうな。」

スプーンをゆっくり引き抜くと、ハバネロアイスは跡形もなくなくなっている。


「アカイトの、バカー!」

うわーんとか言いながら、両手で顔を覆うカイトがマジ泣きなのか嘘泣きなのかわからねぇ。


「ほらカイト、アイスだけなら別に辛くねぇから。」

「うー。」


うなって警戒するカイトに、今度はアイスだけ乗せたスプーンを寄せてやる。
ビビリながらもおずおずと舌先をアイスに付けて、数秒。


「辛くない。」

「だろ?」

辛くないと確認出来ると、すぐ様スプーンを口に含んで笑うカイト。
もう一口、とせがまれるから、すくってやると、雛の様に嬉しそうに口を開いた。


「アカイト、本当は優しいから好き。」

「どうも。」


現金な奴だな。でも、アメとムチに翻弄されるコイツだから好きなわけで。

「じゃ、次は一味付きな。」

「やっぱり嫌い!」


どっちだよ、ってついに噴き出してしまった。


「好きに決まってるだろ!」

「俺も。」


満場一致。
睨むカイトを抱き寄せて、次の遊びを始めようか。




FIN.



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