勘違い


あの子とあの人が付き合っている、そんな夢を見た。

ぼんやりと目を開けて、まだはっきりとしない意識の中でぐるぐると感情が喉元にとぐろ巻いて息苦しい。

夢と現実の狭間。どちらかというと現実よりで、なんて素敵な事なのだろうと思った。

あの子と私は仲良しで、付き合うに至ってまでの過程、つまりは馴れ初めなんかを聞いて羨ましがっていた。別にあの人とは碌に挨拶もしたことないのに。

眼球だけをぐるり、動かして、多分、あれは夢だったんだろうな、と考えた。まだ寝呆けている頭。鉛のように重たくて、枕を沈めて、起き上がらせないようにしている。

実際のところ、あの子もあの人と碌に挨拶なんかもしてはいない。席が隣だったってだけ。消しゴムを落としても拾い合うような仲じゃない。

だけど夢の中では付き合っていて、2人とも仲良しそうで、あんまりベタベタはしないで、どちらかといえば距離感が分からないといった感じで、どこか他人行儀でよそよそしくて、可愛いな、なんて思った。

あの人と私は何にもない。席も近くないし、まともな会話もない。だからどうやって笑うのかもしらないのに、どうゆうわけか、きっと夢独特の不思議な魔法なんだろうけど、あの人は笑っていて、いた。

現実でも本当に付き合ったら面白いんだけど、けどきっと、あの子とあの人は平行ってわけでもないんだろうけど決して交わる事のないグラフ同士なんだろうなって思った。

ちょっとその考え方は可笑しいと思っていても、ストン、と型にはまる言葉が見つからない。

目を閉じて、ゆっくり鼻で呼吸をして、枕に沈んでいく。ほら、また眠たくなってきた。睡魔が瞼を撫でる。

夢にあの子が出てくるくらい大好きなのに、どうしてあの人が出てきたのかはやっぱり分からないけど。きっと昨日、初めて「おはよう」挨拶出来たからなんだろうなって、寝呆けた頭が勘違いをした。








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