おさないふたり



霜月が近づいていた。
月は鋭く満ち欠け、雲の後ろでぼんやり輝いている。薄っぺらな窓ガラス一枚だけの隔たりだけでは、熱い一時を過ごした2人抱き合っても、寒いのは変わらない。


「……寒くなか?」


吐息も白くなる。
私には彼のその柔らかな口調と、裸の私をギュッと抱きよせながら顔色を伺う、優しさが染みる。

麻の布に落ちるのではなく、傷口に針を刺すような。


「なんも」


目の前の胸板に頬を当てる。
小鳥の心臓みたいな音がする。


「あんたがこーしてるから、なんも寒くなかとよ?」


さっきまで繋がっていた結合部は、まだ湿っている。今すぐにでも洗い流したい。温かいシャワーに熱いお風呂。だけど、そこにたどり着くまでには、まず階段を下りて少し歩かなくてはいけない。

何より布団から出たくない。


「…明日はもっとしばれるけん、朝も夜も……」
「…いややなぁ」

「……おん」
「あんたがずっとおらんと、寒うて死んでまうわ」


彼は分かりやすく照れた。
それから私の髪を愛おしそうに撫でては毛先を唇に近づけた。


「おまんは、俺んことが大好きやな」


私はそんなことを聞く、彼が好きではない。ためらい、とまどい。また、はじまった。



「好きやで…ほんまに、」
「俺も…」


顔が、来る。
反射的に目を瞑れば、かさついた冷たい唇。ふれるだけの拙い交わり。皮膚と皮膚のぶつかり。たったそれだけ。

ひんやり。冷気を帯びた寝室。裸で抱き合ったって、身も心も暖まらないことくらい分かっているのに、私たちは幼いから、それが愛だと信じ続けているのです。









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