「やらないんですか?」

「残念だな。面白いと思ったんですが」

「すみません」

「いいんですよ。それより」

安室さんが言いかけた時、安室さんを呼んでいる声が聞こえてきた。
コナンくん達のほうで何かあったようだ。

「すみません。行ってきます」

安室さんは走って行ってしまった。

「やれやれ…やっと行ったか」

昴さんが私の隣に腰を降ろす。
口調が赤井さんに戻ってしまっている。

「いいんですか?」

「なに、向こうまでは聞こえないさ」

私はボトルからアイスコーヒーを注いで赤井さんに渡した。

「たまにはこうして外で寛ぐのも悪くないな」

受け取ったアイスコーヒーで喉を潤した赤井さんが呟く。
赤井さんは今日はハイカラーのシャツを着ている。
下はチノパンだが、その中に水着を履いているかどうかはわからない。

「君の隣は居心地がいい」

赤井さんが言った。

「不思議だな、こんな風に安らいだ気持ちになるのは初めてだ」

「赤井さん…」

「俺は器用な男ではないのでな。一人の女性しか愛せない。だから、今は…」

赤井さんが言いかけた時、蘭ちゃんが駆け寄ってきた。

「すみません、荷物当番代わります!」

「もう少し遊んできても良かったのに」

「大丈夫です、今度は私に任せて下さい」

「ありがとう蘭ちゃん」

私が立ち上がると、昴さんも立ち上がった。

「僕達は少しその辺りを散歩してきます」

「はい、行ってらっしゃい」

昴さんが私の手を握ったのでびっくりした。
そのまま手を引かれて、人気のないほうへ連れて行かれる。

波打ち際を手を繋いで歩く形になり、なんだか胸がドキドキした。
まるで恋愛映画のワンシーンのようだ。
押し寄せてくる波が足を洗っては引いていく。

「好きだ」

低く告げられた、昴さん…赤井さんのその言葉は、波の音とともに私の鼓膜を甘く揺らした。

「俺の側を離れるな」

返事の代わりに、彼の腕に抱きつく。

「離れません、絶対に」

顎を掴まれ、顔を上げさせられた。
赤井さんの顔を見つめてから静かに目を閉じる。

初めてのキスはコーヒーの味がした。


赤井END


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