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友人達と近況を伝えあったり、学生当時の思い出を話したりするうちに、いつしか聖羅の頭からは幼稚な男の存在は完全に消え去っていた。
山田(仮)は相変わらず聖羅のほうを気にしていたけれども。

話が盛り上がったお陰で自然と酒も進み、普段より飲んでしまったと自覚した時には、もうお開きの時間になっていた。
最後に幹事が締めて、ぞろぞろと店を出て行く。

「この後は?二次会どうする?」

「カラオケとか」

「あ、聖羅はダメだよ。売約済みだから」

友人がニヤニヤして聖羅を見る。

「ほら、お迎え」

「え?」

促された方向を見ると、見慣れた黒衣の男が立っていた。
途端に聖羅は顔を喜びに輝かせて駆け寄っていく。

「赤屍さんっ!」

ちょっと足元がふらついたが、気にせずぎゅうと抱きつくと、よしよしと頭を撫でられた。

「今日は随分飲んだようですねえ」

「まだまだ全然大丈夫ですー」

振り返って手をふると、友人達は昔聖羅がされていたみたいに、赤屍の存在にまたもやショックを受けたらしい山田(仮)を笑ってはやしたてているところだった。
みな酔っ払っているので容赦がない。
「ねえいまどんな気持ち?」とケタケタ笑われた彼は殆ど泣きそうになっている。

何だかとても幸せな気分だった。

それはアルコールのせいかもしれないし、いじめっこをギャフンと言わせたせいかもしれないし、友人と赤屍の存在のお陰かもしれない。

「赤屍さぁん…大好き」

「おやおや」

楽しげな笑みを浮かべる美貌の運び屋に、猫がそうするように身をすり寄せて甘える。
この人は幼稚な嫌がらせなんてしない。
もっと巧妙な罠を仕掛けて獲物を捕まえたり、からかったり遊んだりはするけれど。
そしてそんなところがとても恐ろしく感じられたりもするけれど。

「私のこと好きですか?」

「ええ勿論。愛していますよ」

「えっちなことしたい?」

「してもよろしいのですか?」

車の助手席に入れられた聖羅は、機嫌よくにこにこしながら頷いた。

「今日はいっぱいして下さい!」

翌日、完全に酔いがさめ、羞恥と後悔で青くなったり赤くなったりしつつベッドの上を転げ回ることになるのだが、とりあえず今はまだ幸福感でいっぱいの聖羅だった。



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