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「だから、二人には、借金返済の名目でウェイターをやって貰うんです。考えてみて下さい、マスター。あの二人は顔だけ見れば、イケメンで通ります。作法や何かは躾れば大丈夫でしょう。口コミでイケメンウェイターと、可愛いウェイトレスがいる喫茶店だと広めるんです!」

「しかしなあ、聖羅ちゃん。それは……」

俺が目指していた『城』とは方向性が違うような…、といいかけて、波児は口をつぐんだ。
聖羅に睨まれたからだ。

「マスター、これはお店の為なんです。私だって辛いんです。でも、大丈夫、お客さんの流出を食い止められれば、また今まで通り、まったり運営出来ますよ」

聖羅は波児を慰めた。
その飴と鞭の使い分けの上手さが誰かを想像させる。

「準備は赤ば──手伝ってくれる人がいるので、私がやりますから。とりあえず、蛮ちゃん達にはバーテンダー風の格好をして貰おうと思って、もう衣装も用意してあります。かが──ホストの知り合いにも、若い男の子が好きなおば様に情報を流して貰うよう頼んでありますし、後は中央公園付近にいるであろう二人を拉致ってくるだけです!」

「…拉致……?」

「えっ?私、いま、そんな事言いました? やだ、ちゃーんと合意の上で連れて来ますよぉ」

そう言って笑う聖羅も、かつては頻繁に黒衣の運び屋による拉致の恐怖に晒されていたはずなのだが──
慣れなのか?それとも今や見事に恋人の座におさまってしまった、同棲している赤屍の影響なのか?
とは、とても聞けない波児だった。
彼の理想の喫茶店は、今や執事喫茶やメイドカフェと同列のものに変わりつつあった。



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