樹の中に入ると中には数十匹の獣達が奥に行かせまいと群れを成していた。
「だー!!外に落ちてたエンゲーブの林檎がしっかりお前らの証拠になってんだからなっ!あー!うぜぇえ!!」
ルークが樹の入り口で騒いでいると奥からしわがれた獣の鳴き声が聞こえてきたかと思うと獣たちが大人しく道をあけた。
「お前達はユリア・ジュエの縁者か?」
「はい。・・・僕はローレライ教団の導師イオンと申します。・・・あなたはチーグル族の長ですね?・・・何故、あなた方はエンゲーブの村で盗みなどを・・・」
「・・・なるほど、その件で我らを退治しに来たということか・・・」
「チーグルは草食のはずです。何故肉や人間の食べ物を盗む必要があるのです?」
「・・・我らの仲間が北の地で火事を起こしてしまった。」
彼らの言い分としてはこうだ。火事を起こした地でに住んでいた肉食の魔物ライガが起こり食べ物を寄越さなければチーグルを食らうと言い出したらしい。
「…それで村から食料を盗んでいたのね…。ルーク、犯人もチーグルだって判明したけど貴方はこの後どうしたいの?」
「そりゃこいつらを村に突き出して・・・「そしたら今度はライガは村を襲うでしょうね?」
ルークの言い分を遮る様にしてティアはそう言い放つ。流石に村を襲われるのはまずいと答えに困りルークは帝人に視線を向けた。それに対し帝人は口元に杖を寄せ少し考え込む素振りを見せ、ややあってからルークに一つの提案を投げかける。
「そうだなぁ・・・ライガのボスに他の土地に移住してくれないか頼みに行ってみたらどうかな、チーグルに通訳でついてきてもらってさ?」
「説得ぅ!?大丈夫なのか!?」
「大丈夫かどうかは説得次第だよ。…もし、失敗したらライガを倒す事も考えて。」
帝人は言いにくそうにそう言い、ルークを見やる。ルークは一瞬迷い、だがライガの説得を決めた。それからイオンが長老に通販を頼むと火事の原因となったチーグル―――ミュウが通訳として着いてくることとなった。
***
「―――あれがライガの女王ね…」
「あれが…?」
チーグルが住む巨木から少し離れたライガの住処の奥へと進むと、一際大きな魔物、ライガが巣に鎮座していた。こちらに気がついており、牙をむき出し威嚇してきた。
「ライガは女王を中心として群れをなす魔物だからね…説得するなら彼女だ。…ミュウ、通訳お願いしてもいいかな?…ここは人間の村の近くだ。これ以上村の被害が出たら君たちを排除しなければならなくなる。だから、ここを立ち退いて欲しいって。」
「はいですの!」
ミュウミュウと説得を始めるが、ややあって女王の巨大な咆哮をあげ風圧により岩や木片が吹き飛ばされミュウや帝人達を襲った。
「あぶねぇ!!」
ルークはとっさに飛んできた岩を剣ではたき落とし帝人やイオン達を後ろに庇った。
「ルーク!!…ありがとう…」
「良いから隠れてろよミカド!!」
「ミュウ…クイーンは何と言っているんですか…!?」
ルークに後ろに庇われたイオンは少したじろぎながらも気丈にミュウに問いただした。
「た…卵が孵化する前だから近寄るな、立ち去れ…といってますの!!」
「卵ですって…!?不味いわね…」
ライガは卵生で、肉食である。少なくない卵の数を見てもチーグルが用意する食料では足りないのは明白だ。―――そうなれば次に狙われるのは近くにある村、エンゲーブしか無い。
ルーク達がどうするか考えている家にライガクイーンは巣から立ち上がりうなり声をあげ、ゆっくりと此方へと近づいてきた。
「ライガの女王様とっても怒ってるですのー!」
もはや一発触発、な時、後ろに下がっていた帝人が小さくため息をついた。それに気付いたルークはきょとんと帝人を見つめた。
「…しょうがない、戦おう。ここで立ち止まっては居られない。…ルーク、ティア、ごめん。援護お願い出来るかな?」
「お…おう」
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