「るー・・・てよ!・・・き・・・ルーク!起きてよ!」
「・・・っ、誰、だ・・・?」

誰かに揺り起こされうっすらと目を開けると、薄暗い月夜に懐かしい顔が映った。短くさっぱりとした黒髪と緑眼の少年。
シズオとミカドの養子だと言うこの少年はごくたまにガイの様にルークの部屋の窓から侵入し、話したいことを話して去っていく不思議な少年だった。

「リョク・・・?なんで、ここに・・・」
「覚えててくれたんだ?良かった!どこも怪我してない?」
「当たり前だろ・・・!俺たち、兄弟、なんだろ・・・覚えてるっつーの!・・・ど、どこも怪我してぬぇーから!」

自分の台詞に照れたのか顔を耳まで真っ赤にさせ俯いて立ち上がった。

「ここは…何処、なんだ…?でっけぇ水溜まりだな…」

当たりを見渡すと一面白い花で覆われており、月の見える方は切り立った崖になっていた。

「あれは海だよルーク。舐めるとしょっぱいやつ!!」
「海!?これが海…」

ルークは初めて見た海をに感動ししばらくぼーっと眺めていた。
その頃後ろの方でもう一人、ティアが目を覚ました。

「あ、起きた?」
「…っ!?誰!?」

見知らぬ人物に顔を覗き込まれ女性は警戒に目を細めた。

「僕はリョク。ルークの知り合いだよ。…君は?」「私は…ティア。」
「あー!お前師匠をっ!!「まぁまぁルーク。それはどうでもいいから。」

海を見ていたルークがいつの間にかティアが起きてる事に気づき掴み掛かろうとしたがリョクが後ろから服を掴み下がらせる。
「ど…どうでもよくねぇよ!!」
「いいから。…で、どうしてルークがここにいるの?」
「私と彼の間で超振動が起きたんだと思うわ…」

ティアがちら、とルークを見ながら申し訳無さそうに言葉を吐き出した。

「ちょうしんどう…?」
「同位体による共鳴現象。…まぁ不思議パワーで飛ばされたって事だよルーク!!」

説明がめんどくさかったのか適当に流すリョク。 ルークはリョクの言うことにふーん、と適当に流す。

「…で、これからどうすんだ?」
「あなたをバチカルのお屋敷まで送るわ。…こうなったのは私の責任だもの…」
「僕も母さんに言われてルークを迎えに来ただけだから。だからルークは僕の後ろに隠れててね?」

腰にかけられた剣に触れ、ルークに笑みを見せる.。
「な・・・なんでだよ!?」
「そりゃ・・・王族の君に前線に立てとか・・・ねぇ?まぁ細かいことなんて良いから。行こっ!」

ぐいっとルークの手を引き小川に沿って渓谷を下る。
度々草木の影にチラチラと魔物の影が見え襲いかかってきたがリョクがルークとティアが手を出すまでもなくあっさりと始末したのだった。

「お、出口か…!?」
「そうみたいだね。…あれ、誰か居る…」「うわっ!?漆黒の翼!?」

渓谷の出入り口でばったり会ったのはどうやら辻馬車の御者のようだった。男女の組み合わせで最近世間を賑わせている義賊、漆黒の翼と勘違いされそうになったがなんとか誤解だったと納得してもらいルークの家のある首都へと乗せて貰えるようティアが交渉し始めた。

「ん?あぁ。13000ガルドでいいよ!!」
「…高い……」
「あぁ、母さんからお金預かってきてるよ!!じゃあお願いします御者さーん」

あっさりと三人分の料金を払いルークを連れて馬車へと乗ってしまったリョクを何か言いたそうな顔をしたティアがそれに続いた。

「あの、私の分まで…、良かったの?」

言いにくそうにティアがそう呟く。

「うん!!母さんならそうしろって言うからね。お礼は母さんに言ってよ?」
「そうね…そうするわ。」

ガタガタと進み始めた馬車の一定のリズムにつられてルークはいつしか眠りの世界へと誘われていった…。



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