(僕はちょっと出かけてくるけど、静雄さんと一緒にいい子にしててね?ルーク。)


(グランツ謡将は明日ダアトへ帰国されるそうだ)



早めの剣術稽古の為ルークと静雄は中庭に向かってる途中だった。
「どうした?ルーク」
後ろに静かに控えていた静雄が心配そうに口を開いた。

「ミカドも、師匠も、俺の所から居なくなっちまうのか・・・?」
「あの髭はともかく帝人が俺やお前の前から居なくなるとかありえねぇよ。」

ヴァンが導師イオン捜索でダアトで帰国するらしく急遽剣術稽古が入った。だが、いつも傍らで応援してくれている帝人はここには居ない。

「ほら。余計な心配しねぇで行ってこいよ。な?」

ガシガシとルークの頭を撫でヴァンの待つ中庭へと送り出す。
中庭に出るとガイとヴァンが何か話し込んでいた。

「どうしたんだ?ガイ」
「あぁ、ヴァン謡将は剣の達人ですからね。少しばかりご教授願おうかと思って。」
「へぇー?・・・、あれ?」

(なんか、今・・・)

ルークは何かおかしな感覚に襲われたが気のせいかと思いヴァンの師事に従う。

「ヴァン師匠、今日もよろしくお願いします!」

ガイはベンチに座り静雄はその傍らでじっとルークを見ていた。
そして。
目の前でルークとヴァンの打ち合いが始まって少し経った頃だった。

「なんだ・・・!?」
「この声は・・・」

(トゥエ レィ ズェ クロア リュオ トゥエ ズェ)

「体が、動かない・・!!」
「これは譜歌・・・!第七音素術士が屋敷に入り込んだのか!?・・・っくそ、眠気が襲ってくる。何やってるんだ、警備兵たちは!」

急に眠気が襲いその歌を聴いた者は皆片膝をついた。そのとき、2階から女性が降りて来てヴァンに近付いてきた。

「ようやく見つけたわ・・・裏切り者ヴァンデスデルカ。覚悟!」

静雄は屋敷の2階から降りてきた女性が犯人と断定し直ぐ真横にあったベンチを掴むと女性に向かって投げつけた。

「覚悟すんのはてめぇだぁああああ!!!」
「っ!?」

驚くような速さで飛んできたベンチをバックステップで慌てて避けると追い討ちをかけるようにルークが女性に向かって切りかかった。

「何なんだよ・・・お前はぁあ!!」
「いかん、やめろ!」
「・・・っばかやろ!ルーク!!」

キィン、と反響する高い音とともに女性とルークが光に包まれる。

(響け・・・ローレライの意思よ、届け・・・開くのだ!)

一層光が強くなり、消えた。・・・その場に居た二人もどこかへと飛ばされたのか消えていた。

「しまった・・・第七音素が反応しあったか・・・!」

ヴァンが呆然と二人が消えた空を見上げていると眠りから気がついた警備兵達が中庭へとなだれ込んできた。
静雄は眠気が去った頭を軽く振り、マルクトの方角を見、ボソリと呟いた。



「・・・っち・・・やっぱりこうなっちまったか・・・帝人、頼んだぜ・・・」




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