02.
「まさか、臨也さんをウチに泊めることになるなんて思いもしませんでしたよ・・・もらい物ですけど、どうぞ。」
風呂上りの臨也を前に小さくため息をついて帝人が切ったばかりのスイカが乗った盆をテーブルに置く。
「俺だってびっくりしたよ。おばあさんに連れてきて貰った先に帝人君がいるんだもん。」
「はぁ・・・おばあちゃんに感謝してくださいね?父さんの浴衣残っててよかった・・・」
何も宿泊道具を持ってきていなかった臨也に合う服が父親のしかなかったので困り果てて浴衣を引っ張り出したのだった。
帝人はふぅ、と臨也の対面に座り込みテーブルの上のスイカにかぶりついた。
「臨也さんスイカ食べないんですか?おいしいですよ?」
「スイカ食べたことなくてさ、・・・!甘いね、」
シャク、と一口頬張り思いのほかの甘さに目を見張る。
「そりゃあもう、豊口さんとこのスイカですからねー!あ、すみません、豊口さんってスイカ農家さんの家なんです。毎年この時期になるといっぱいおすそ分けしてもらってて。」
ニコニコとスイカについて語る少年に臨也の顔にも自然と笑みが浮かぶ。暫く二人で黙々とスイカを食していると帝人がふ、と思いついた様にスイカから顔を離した。
「あ、臨也さん、スイカ食べ終わったら面白いもの見せてあげますよ!」
「おもしろいもの?」
いたずらを思いついた子供の様に楽しそうに笑みを浮かべる帝人に首を傾げながらも臨也はまた一口スイカを齧った。
* * *
スイカを食べ終わって二人で外に出た。街灯が殆ど無い田舎道では懐中電灯の明かりだけが頼りだった。
「星が綺麗でしょう?臨也さん。」
帝人に言われて初めて夜空を見る。遮るビルも何も無い空では星々が一面に広がっていた。
「へぇ・・・?」
「僕、星が見えない所があるなんて知りませんでしたよ、池袋に来るまで。」
「俺も、ここにきて驚いてばかりだね、こんなに綺麗なものなんだね、夜空ってさ。」
お互い暗がりの中目を合わせて笑う。
「で、も、驚くのはこれからですよ!」
帝人はそう言い道沿いに流れている川の近くに寄る。
「足元気をつけてくださいねー?」
「こんな所になにがあるって言うんだい?」
。
「電気、消してみてください。」
帝人の言うままに懐中電灯を消す。すると今まで気付かなかったが小さい緑の光がふよふよと周りを飛んでいる。
「・・・蛍?」
「そうですよー。この時期になるといっぱい飛んでますんで。僕にとっては何でもない景色ですけど、臨也さんとか見たこと無いんじゃないかな、って思って。」
いたずらが成功した子供の様にはしゃぐ帝人。そんな帝人を見て苦笑する臨也は肩を竦めるとまた蛍に視線を戻す。
正直少しびっくりしたがそれだけだ。だが、自分に賢明にコレを見せようとしていた隣の子供の事を思うと自然に笑みがこぼれた。
next→