01.
のどかな農村。民家は殆ど無く、田畑が広がる農道にて。今日泊まる民宿を探していた臨也は、誰も居ない視界に唯一映った人影に飛びつくように話しかけた。
「すみません。この民宿ってどこにありますか?」
「あぁー?あんだってー?」
「・・・」
畑の片隅で休憩していたであろう人影は耳が遠い老人であった。面倒くさいことになりそうだと思った臨也は何も言わずその場を後にした。
その後、しばらく地図とにらめっこしながら農道を進んでいるとまた農作業をしている老婆の姿が目に入った。今度は老婆の方から話しかけてきた。
「おや、こんなところに若い方が珍しいねぇ。」
先ほどの老人より話が伝わりそうな気がした臨也はすかさず地図を見せた。
「すみません、この民宿を探しているんですが・・・」
老婆はその地図を見るとあぁ、と息を吐いた。
「ここ、逆方向だよ・・・今の時間だとバスももう出てないしねぇ・・・そうだ、今日はうちに泊まって行ったらどうだい?」
「ご迷惑じゃないですか?」
「なぁに!困った時はお互いさまだよ!」
更に面倒くさい展開になったようだ。だが、どうしようも無いようなのでお言葉に甘える事にした。
* * *
田舎の農家にありがちなやたら広い庭にしっかりした一軒屋が佇んでいた。
「帝人ー!今帰ったよ!お客さん居るからお風呂沸かしてくれんかー!」
玄関のドアを開けると見かけにしては驚くほどの大きな声を上げた。・・・呼んだ名前にひっかかりはしたが。
「みかど・・・?」
すると奥からトタトタと誰かが出てきたようだ。
「おばあちゃん?お客さんって・・・」
「「 あ。 」」
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