心優しい眼鏡の少年
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「闇の帝王復活だって?」
「そんなことありえる訳がない」
「おい見ろよ!今日の預言者新聞!」
『ハリーのハッタリ?』
『嘘吐きダンブルドア』
「でも、セドリックが死んだのって・・・」
「そんなこと言ってるのポッターだけだよ」
「だって”あの人”はもう死んだんでしょ」
ハリーの嫌な噂がまたたっている。
夏休みも明けて私達は5年生になろうとしていた。
スリザリン生が固まっているコンパートメントもハリーの噂で持ちきりだった。
ハリーのことで話題になるとドラコはあからさまに機嫌が悪くなる。
「頭のイカれた奴の話なんかして何が楽しいんだ?」
「・・・最低」
私の気分も最悪だった。ホグワーツに着いてドラコ達の後を追うと、
タイミング良くハリー達と出くわしてしまった。
「はは、やっぱりイカれてる」
「・・・っ!」
「やめろよ、たかがマルフォイだろ」
こういう時のドラコだけ嫌い。ロンの言うとおりであんな奴の相手なんてしなくていい。
たまに自分が何でドラコのこと好きになったんだろうって思う時がある。
ドラコのことをすっごく好きな自分と冷めた目で見てしまう自分がいる。
ドラコも私も、大人にならなきゃ。
「ごめんね、ハリー」
「・・・アルディスが謝ることじゃない」
学年が上がるにつれてドラコとハリーの関係はどんどん悪くなっていった。
幼い頃はただの喧嘩で終わっていたけど、大人に近付くにつれて、
「嫌い」という感情からお互いに「憎しみ」に変わった気がする。
「あの先生、絶対何かやらかすと思う」
ぼそりと呟いた独り言に隣にいたドラコは少し反応したが、口は開かなかった。
あの先生、とは全身真っピンクでへんてこな帽子をかぶったミス・アンブリッジのこと。
魔法省からきたらしいが、ズカズカ前にでて何をするかと思えば変な御託を並べて座ってしまった。
つまり、魔法省がホグワーツに干渉をするということだった。
今年もホグワーツに嵐がきそうな、そんな予感がした。
そして、ハリー達がダンブルドア軍団を結成するのはもう少し寒くなってからの話。
***
H.Side
「アルディスは何でマルフォイと仲が良いんだ?」
「仲が良い?あれが?」
ロンの疑問に僕は混乱した。
「貴方達、何もわかってないのね」
ハーマイオニーが後ろから喝をいれた。
僕はさらに混乱した。
「わかってない?じゃあハーマイオニーはわかるっていうのかよ?」
「ええもちろん。でもこれは、女の子にしか分からないものなのかもね」
ハーマイオニーは不思議な発言を残しながら、足早にホグワーツへと向かった。
ルーナのことを不思議ちゃんと言っていたが今のハーマイオニーもよっぽど不思議だ。
僕はアルディスとマルフォイは仲が悪いのかと思っていた。
彼女の口から出るのは奴の悪口ばかりで、よく喧嘩もしている。
「ロン、絶対おかしいよ」
「え?何で僕!?」
女子って、なんだか難しい。
***
『―――闇の帝王が、復活した』
ホグワーツでの学校生活が始まってもこの話が疎かになることはなかった。
ハリーの周りにはいつも人一人分、間があいている。
ロンとハーマイオニーもいなかったので声をかけてみた。
「ハリー」
「・・・ああ、アルディス、この間はごめん」
「何で謝るの?」
「汽車の所でさ、あの時少しイライラしていたんだ」
「ああ、あのこと。ハリーは優しいね」
本当に優しい。あいつだったらここで謝罪するなんて絶対ありえない。
ハリーは本当に優しい心の持ち主だ。
「・・・君は、僕のことどうとか思わないの?」
「どう、って・・・」
少しの沈黙の後、ハリーは重い口を開いた。
一瞬何のことかわからなかったが、すぐに理解した。
「私は、信じてる。ハリーのこと」
決して嘘ではなかった。
セドリックのことは衝撃的だったけど、あのハリーが嘘をつく訳がない。
もしハリーが大きな嘘をついたとしても、ハリー自身が自分のことを許さないはずだ。
ヴォルデモートが復活したということも嘘ではない、はずだ。
嘘だとしたら、両親があんな風に動き出すことなんてありえない。
でもこんな重い話、ハリーにする訳にはいかない。
「ありがとう」
ハリーはゆっくりと笑って、その後は些細な世間話をした。
この後、事の一連を見ていたドラコに呼び出されたのは言うまでもない。