焦る気持ちと裏腹に  [ 22/31 ]




D.Side

僕は焦っていた。
前にも言ったと思うが、少なくともその時よりも今はかなり焦っている。
明日から休みが明けてしまう。焦りと苛立ちでどうしようもない衝動に駆られていると
シャワーから出てきたアルディスがノックもせずに勢いよく飛び込んできた。
髪も濡れたまま、パジャマも肌蹴た状態でなんともだらしがなかった。

「ちょっとドラコ!明日から学校ってきいてないんだけど!」
「お前・・・人の話をこれっぽっちもきいてないんだな、」
「さっきドラコのお父様に言われて初めて気付いたわ・・・まだ何にも用意してない!」

うわ〜んと嘆きながらアルディスはトランクを一目散に漁っている。
彼女の後ろ髪はまだ水滴がついたままでしっとりと濡れていた。

「濡れてるぞ」
「もうそれどころじゃないの!ドラコも手伝って〜」
「・・・」

仕方なく髪の毛を拭くのを手伝ってやった。
ふわりと僕の家のシャンプーの香りが妙に鼻についた。
拭いている間に少し覗く項が綺麗で、いやらしくて、つい後ろから抱き締めてしまった。

「ぎゃ!盛るな!本当にそれどころじゃないの!」
「だめだ、我慢できない」

一週間以上の溜まりに溜まった何かが静かに爆発した。
柔らかい二の腕を揉みながら、その位置を段々と下にずらしていった。
アルディスも動きをとめて少し抵抗し始めた。しかし、それもどこか力が入っていない。

「ん・・・っ、や、」
「・・・」

無理やりアルディスの顎を掴んで深い口付けをした。
逃げる舌を追いかけて激しい口付けを何度もする度、アルディスの息切れが大きくなっていった。

「は、ぁ・・・、やだ・・・」

アルディスは静かに涙を流していた。
この泣き方はアルディスが本当に嫌な時になる泣き方だった。

「・・・僕のことが嫌いか?」
「ううん、違う・・・嫌いな訳ない、好きすぎて・・・だめなの」

そんな言葉、嫌という程きいた。僕だってそうだ。
今はまだ理性がきいている方だ。
もしこの理性が振り払われてしまったら・・・
僕はきっとアルディスをぼろぼろにしてしまう。

「こんなに好きなのに・・・これ以上してしまったら、ドラコがどこか遠くへ行ってしまう気がするの・・・」

え?
今、なんて言った?

「それが怖いの、ドラコを失うのが怖い」

僕だって怖いさ、これから先どうなるかなんて分からない。
分からないけど、僕がアルディスの元をいつか離れてしまうことは確かだ。



僕が、アルディスの元を離れる・・・?


「――ドラコ・・・?泣いてるの・・・?」

僕の瞳から一粒の涙がこぼれていた。
自分で涙が流れるといった自覚は全くなかったが、
僕を覗き込むアルディスの瞳に映る自分が、酷く情けない顔で泣いているのがよく分かった。

こんなことでは駄目だ。アルディスを守るのは他でもない、僕だ。
僕しかいないんだ。
君を守る為というのなら、悪だって闇だって何だってなってやる。





***


ドラコが泣いた。
小さい頃から泣き虫で意地っ張りだったけど、あんなふうに静かに泣いていたのは初めてみた。
ドラコが閉心術を使っていることなんて、とっくに気付いていた。
初めは私に隠し事をするなんて悲しくて悩んだけど、ドラコにだって言えないことはあるんだと思って、
これからもこの先も言わないことにした。・・・でもあんなに強引にするものだからつい言ってしまった。
言うはずじゃなかった。言うべきではなかったのに。

あの後、私達は余り会話を交わさず同じベッドに入った。
ドラコの手を握ったら強く握り返してくれた。
お互いを信頼し合ってるはずなのに、やっぱりどこがですれ違ってしまう。
お願いだから、どこにも行かないで―――。





”見えない影が私達を邪魔してる”



  


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