ほんの少しの勇気  [ 16/31 ]




D.Side

アルディスから告げられた真実に最初は何も言葉が出なかった。


―――死喰い人になれだって?

僕だってそんなこと言われたことない。
僕たちはまだ四年生だぞ?

「逃げてきたの、箒、乗って、それで、」

ふっと力が抜けたのか、アルディスはそのまま倒れてしまった。
無理もない。真夜中に気付かれずに抜け出してきたのだ。
身体的にも精神的にもアルディスはボロボロの状態だった。

「私、怖い、もうやだよ、助けて」
「大丈夫、僕がいるだろ」

自分で言って驚いた。するすると愛の言葉が僕の口から出てくる。
力の抜けた彼女を抱き締めながら、頭をぽんぽんと軽く叩いた。

「なりたくない・・・死喰い人になんてなりたくない・・・!」
「うん」
「お婆ちゃんがいないの・・・!帰りたくない・・・!」
「うん」

アルディスは半狂乱になっていた。
腕も随分と細くなって、顔もかなりやつれていた。

「・・・まだ、先の話だけどさ」
「・・・・・・うん」

「次の休み、僕の家に来ないか」
「・・・え?」

まだ父上にも母上にも了承を得ていないけれど、きっと許してくれる。
そんな気がしたんだ。二人ともアルディスのことを気に入っているし、面識もある。
それに…僕達は恋人らしいことを一度もしたことがない。
ホグズミード村だって彼女は行きたがらないし、手を繋ぐことさえも…。
だからこうやって二人だけの時間というのが滅多にないのだ。

「ドラコの家に・・・?いいの?」
「ああ、きっと大丈夫だ」
「でも・・・悪いよ、そんなの」
「君は少し、僕に甘えるべきだ。・・・嫌ならいいが」
「嫌じゃない!・・・ありがとう」

優しく微笑んだ彼女に僕の心は溶かされたようにじんわりと暖かくなって
より一層、強く彼女を抱き締めた。

「い、痛いよ、ドラコ」
「我慢しろ」
「・・・いじわる」



次の日、僕は朝一で手紙を出した。
両親からの返事は、yesだった。
これで春休みは僕とアルディスの二人だけの時間が…
増えると信じて、とてもドキドキした。



  


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