パーカー氏の憂鬱
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 思いの外、デッドプール──ウェイド──は、性に関して倒錯的な趣味はない。
 これは僕がウェイドに追っかけをされたり逃げられたりしながら紆余曲折を経てやっと恋人になったことによって知ることができた彼の意外な一面だ。
 僕は最初──て言うのは彼と付き合う前からも含めてなんだけど──この、デッドプールという男はそりゃあ何というかな、コホン、普通のセックスじゃ彼を満足させられないんじゃないかと酷く心配してたんだ。つまりそう、彼はものすごい倒錯的趣味があるんじゃないかと勝手に思い込んでたんだよ。
 けれど実際、彼とその、初めて身体を重ねたとき別にウェイドはそんな変な性癖は持ってないって知ったんだ。
 いまでも思い出すとにやけちゃうんだけど、あ、これ以上話してもいいの? ぶっちゃけるけど結構のろけるし、その、夜の話とか……え? あ、ああそう、それを聞きに来たわけね。いやまあ、僕はいいけど。
 じゃあとりあえず続けるけど、とにかくウェイドは初めて僕としようとしたらものすごく緊張していたんだ。ビックリするだろ? 普段の言動から考えると全然そんな風になんて見えないのにさ。
 で、ベッドの上で緊張してぎこちない彼は本当に小さな声でこう言ったんだ。

「す、すぱいでぃ……ほんとにヤんの……?」

 ってね。
 もう反則だよね、そんなに可愛いこと言われたら理性なんてぶっ飛んじゃうし、色々と元気になっちゃうだろ? まあ僕だって男としてのプライドがあるからね、なんとか暴発は回避したけどさ。
 で、初めてみたいに震える恋人に僕は言ったんだ。大丈夫だよって。
 ウェイドはいつも自分をひどく無価値でろくでもない存在だと卑下する。そして彼は自分自身を相手には相応しくないんじゃないかって怖がるんだ。全然そんな事なんて無いのにね。
 で、まあ分かると思うけど、この時のウェイドはやっぱり自分なんかがピーター・パーカーもとい、スパイダーマンとは釣り合わないんじゃないかって、こんなこと間違ってるんじゃないかって不安になっちゃったんだ。
 ん、なに? え? そ、そんなににやけてた? いや、しょうがないだろ。あんなに可愛い反応されたら男としてこう、色々ね。
 あー、はいはい、続きね。分かったよ。
 大丈夫だよって言われてもやっぱりウェイドは不安みたいで少し泣きそうな表情でやっぱりやめようって言ったんだ。

「だいたい、スパイディたたないだろ、こんな……」

 続きは言わせなかった。だって誰だって自分の恋人を悪く言われたくないだろ。それは彼が自分自身に向けて言うことだってもちろん入るんだ。
 言い終わる前に唇を寄せて、舌を差し入れる。一瞬、びくって震えてああ僕、ウェイドが好きなんだなぁって自覚して、もう限界だった。ウェイドには焦らしてる気なんて全然ないのは分かってたけどもう僕はずっと焦らされている状態の訳で。しっかりウェイドを味わったあとゆっくり唇を離した。
 その時、ウェイドの顔を至近距離で見る事になる訳だけど、思わずイっちゃうかと思ったよ。
 だって恋人が頬を真っ赤に染めて目を潤ませてちょっと放心状態でこっちを見てたらそりゃ、ね? あの時のウェイドは本当にエッチだったし、僕のキスで気持ちよくなってトロトロの目の奥に、でもまだ少し怯えてる気配があって可愛くてもうヤバかった。何度もいうけど、暴発しなかった自分をこっそり褒めたいくらいだったよ。

「僕のかわいい恋人の悪口はそこまで。……ねえ、ウェイド」

 好きだよ。
 って囁いたらもう彼は拒まなかったし、僕に答えてくれたんだ。

「……っ、ぉ、おれも、ぴーてぃ、が、すき」

 もうね、可愛いが全力で殴ってきた感じ。下品だけど下半身に直撃。
 え? 何スーツ? 恋人同士で愛し合うはじめてのセックスでコスプレはどうかと思うよ。や、まぁ、僕ら自身本物だけどさ。あ、マスクもなし。これに関しては結構脱がせるまで大変だったんだ。まっその話はまた今度。
 とにかく、繰り返すけど僕は限界だった。焦らされるしウェイドは可愛いことするしね。
 でもここで焦るわけにはいかない。……少しだけ、もしかしたら、く、口でもしてもらえないかな、とか思っちゃったけど。
 ゆっくり彼の身体を押し倒して……、あ、白いシーツの上で真っ赤になってるウェイドは凄いかわいかった。僕、別にハメ撮りするような趣味はないし、ウェイドは僕だけのモノでいて欲しいけど、君にも見せたい気も少しするぐらいにね。で、キスを落としながら少し強張った身体を宥めるように触ってあげた。ピンと胸がたっててウェイドもきちんと感じてくれてるんだってすごく嬉しかったよ。顔もどんどんやらしい色に染まっていって、気持ち良さそうな声をあげて。知ってる? ウェイドってすごい綺麗っていうか、均整のとれた引き締まった身体なんだ。
 え? 肌? まあ確かに爛れてるけど……そんなの全然僕は気にならないよ。これはウェイドにも何度も言ってるんだけどね。
 んで、その時に知ったんだけどウェイドは胸いじられるのが弱いみたい。きゅってつまみ上げたら女の子みたいに声をあげて僕に抱きついてきて、何度も何度も気持ちいいって喘いで。

「も、ぉね……ぃ、んっぴーてぃ、ぃっ、も……ゃぁっ」
「……うん、僕も限界」

 互いにギリギリまで来てついにその、まあ、あれだよ、僕は彼の下半身に手を伸ばした。
 ローションを指に絡ませて一本ウェイドの中に指を差し入れる。中はすごく熱くて柔らかくてでも入り口はきゅうって僕の指を締め付けてきた。
 ああ、ここに僕のを入れるんだって考えたらもうそれだけでイきそうだった。いや、耐えたよ! 当たり前だろ。でもあんまり気持ちいいから少しだけウェイドの中に指を入れたまま彼の締め付けを味わってたんだ。そしたら

「はぁっ、ねっピート、指っぅ……んぅごかし、て」

 ぷりーずって。
 こんな可愛いしエッチなおねだりある?!
 あっ、ごめんちょっと声が大きかったね、コホン。
 とにかくもう本当に無理ですぐにでもウェイドと繋がって僕のその……アレを入れたいって思った。でも僕はウェイドに負担をかけたくなかったし、何より二人できもちよくなりたかったんだ。
 僕が焦らしたせいでウェイドはまた不安を感じだしてるみたいだったから、触れるだけのキスで宥めてやる。

「君の中があんまりにも気持ちよくて、ね。
 動かすよ」

 そう言えばさらにウェイドは顔を真っ赤にさせて僕の耳元で熱い吐息を吐き出しながら小さく頷き返してくれた。もっとして、ってさ。素直な良い子にはきちんとご褒美をあげないとだろ?
 ローションをまた絡ませながらさらに指を彼の中に滑り込ませて彼が気持ち良さそうに声をあげる場所を探す。どんどんやらしい声をあげて僕の名前を呼ぶウェイドはもうほんと、マジで、最強に可愛かった。まあ、何だかんだで普段のウェイドもかわいいけどさ、やっぱり二人で愛し合う時って一段とかわいくなるだろ。……え、えっちだし……。
 んんっ、話戻すけど少しずつウェイドの身体を解きほぐしながらイイトコを探す。あとになってウェイドから聞けば僕に触られてるところ全部がくらくらするくらい気持ち良かったらしいけどね。彼が僕を気持ちよく受け入れられるように僕が彼を気持ちよくしてあげられるように熱い胎内で指を動かしてあげる。そして結構奥、僕の中指がギリギリ届くそこに気持ちいい所が。
 あー、これはちょっと忘れて。え? 何でか? そりゃ恋人の弱いところは二人だけの秘め事ってことにしたいだろ。ついでに乳首が弱いのも忘れといて。ああ、あと万が一でもウェイドにイタズラ仕掛けたら親愛なる隣人が君を締め上げに行くから。
 うん、分かってくれたなら良いよ、続き。
 僕の指で良いところを刺激されてもうウェイドは顔も身体もトロトロだった。女の子みたいにあまーい声をあげて身体を跳ねさせながら気持ちいい、好きって全身で伝えてきてくれる。それがすごくいやらしくてかわいくてつい思わずひたすら指だけで彼の中を味わってたんだ。そしたら濃いキャラメルみたいな目がこっちを見てね

「も、ぃいっょお……れちゃっか、きもちっいぃん、からあぁーあんぅっ」

 ぴーてぃ、も、きもちよくなってって。
 ウェイドのご奉仕精神最高。
 色々なコンプレックスを抱えててすごく怖がりながらも僕を受け入れてくれて、しかも一緒に気持ちよくなって欲しいなんて。
 その瞬間の僕はもう一気に頭の中がウェイドに入れたいってことだけになった。男って悲しい。
 でもウェイドに負担はかけたくなかったから、爆発しそうな心臓と破裂しそうな頭をなんとかコントロールしてゆっくりと彼の中に……。
 あー、ごめん、ちょっと待ってね、うん。ふー……。
 初めて繋がった瞬間は今だってはっきり覚えてるよ。熱くて柔らかくてきゅうきゅうしがみついてくる。

「ぴーた……、ぴーてぃ、っん、あぁんっ、は、すひっらいすひっ」

 僕の耳たぶ甘噛しながら必死に伝えてきくれた。
 ……で、こっからはちょっと反省の余地があるけどそこからはもうウェイドの負担とかもろもろ全部ぶっ飛んで強引な行為になってしまった。当然、ケガさせるような力じゃあないけどもう夢中で一心不乱に腰を打ち付けて、熱く締め付ける穴に僕の形を覚えさせようと必死だった。
 でもウェイドも頑張って応えてくれたんだ。

「っは、ぴーてぃ、すき……ぃいんっ、はぁ、ん……すひ! ぃっあァん!」

 涙の溜まったヘイゼルの瞳がきらきらして、そこに僕が写り込む。蕩けた笑みで僕を見上げるウェイドはすごくかわいくて、僕は彼が好きで彼は僕が好きなんだってことでいっぱいになっていった。

「っは、好きだよっウェイド」
「んっぉれちゃ、も、好きっぁぃしてふっ……んぴーてぃ、すひっ!」

 繋がった下半身だけじゃ足りなくて、ウェイドに好きだって言ってしなやかに跳ねる身体にいっぱいキスを落とす。

「っいきそ……!」

 ウェイドの爪が僕の背に食い込む感覚と、僕が一際強く彼に腰を打ち付けたのはほぼ同時だった。

「ぁぁああっはっい、くぅぅっ!」
「っウェイド……!」

 がくがくとウェイドが背を跳ね上げて僕にしがみつく。そんな彼を僕も強く抱き寄せて……中に、うん。
 ん? ゴムはつけてなか……。は? うっうるさいなあ! お互いいっぱいいっぱいだったんだから。
 と、とにかく、終わればまるでずっと走りつづてけたような疲労感とウェイドの高い体温が気持ちよくて顔を刷り寄せたのはほとんど無意識。はあ、と吐いた息は別に疲れだけじゃない。
 ここでやっと自由行動をしてた理性が帰ってきて彼に無茶をさせたんじゃと心配になって顔を覗き込んだんだ。そしたらふわふわした口ぶりで、ぽわーっとした表情で、ウェイドが笑ってた。

「……す、ごく…………ちよかった」

 エッチな表情でそんなこと言われたら、まあ、元気になるよね。僕だってまだまだ若いんだから。
 そしたらびくって身体を跳ねさせてえ? え? って。

「ぴ、ぴーと?」
「ごめん、でも我慢できそうにない」

 きゅん、て後ろが締まったのは期待してくれたのかなあ、なんてね。
 結局? んー、どうだったかなあ。抜かずに三発なんて言うけど……いや、三発どころじゃなかったなあ、途中でウェイドは、えーと、潮っていうの? 少なくとも精液はでなくなってたし。しかも、ベッドで愛し合ったあとにそのままシャワールームで第2ラウンドに突入しちゃったんだ。
 次の日は彼、ヒーリングファクターあるはずなのにあちこち痛かったみたいで少しご機嫌斜めだったけどね。おはようのキスをしたら真っ赤になってシーツにくるまっちゃったんだよ。ほんとかわいい。
 ……とまあ、僕らの初めてはこんな感じ。とにかくウェイドはめちゃくちゃかわいい僕の恋人なの。
 確かにたまに騒がしい言動もあるけどさ、それってウェイドが照れ隠しのサインなんだって気付いてからはもう抱き締めてキスしてあげたいくらいだよ。
 え? ああそうだよ、だから最近彼──デッドプール──に逃げられるんだよね。本当にシャイでかわいいマイスウィート。
 はー、なんか話してたら逢いたくなってきたなぁ……。
 悪いけど、ウェイドに逢いたくなってきちゃったから僕もう行くね。そろそろパトロールの時間もあるし。
 ん? まだ時間はあるんじゃって? 準備がちょっとね……ほら、ヒーロースーツのラインが崩れてたら困るだろ。それに最近はどうも警戒されてるし。
 おっと、本当にそろそろいかないと。それじゃあ、またね!

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