仲間達は寝静まり、今晩の見張り役であるゼロスは夜空を見上げる。
ようやく野宿をすることも、仲間と戦うをことにも慣れてきた。
(おれに仲間が出来るなんてな……)
見上げていた視線を頭ごと下に向ける。
「ゼロス?寝てるのかい?」
唯一、旅の前から知っている存在がいて少なからず安心した。
「んー」
「どうしたんだい?疲れてるなら交代するよ」
フワリと掛けられた毛布は、先ほどまで使っていたのか温かい。
しいなが自分の隣に座るのを横目で確認して、また視線を落とした。
「ゼロス、あんた無理してないかい?」
彼女は時々鋭いときがある。しかも、気づいてほしくない時に限ってだ。
「んなことねーよ」
しいなが掛けてくれた毛布を引き寄せてスッポリくるまる。
「そうかい?あんたが旅慣れてるなんて思えないし、何より仲間に背中を預けるってことが出来るはずがない」
ズバリと言い当てられて返す言葉を探すのも面倒になる。
「まあ、あんたとの付き合いは長いんだから、何かあったら言いな。……頼りにならないかも知れないけど」
彼女は知っているだろうか。今まで、どれぐらい彼女の不器用な優しさに救われたか。
「ロイドたちは信用できるか?」
彼女の答えは簡単に想像できた。
しかし、はっきりと彼女の口から聞きたかった。
「当たり前だよ。みんな良い奴ばかりだよ」
「しいながそう言うならそうなんだろうな」
しいなが不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
「おまえ、嘘つけないし、ついたとしても分かりやすい」
しいなを見てニヤリと笑って見せる。
「余計なお世話だよ。アホ神子」
自分でも分かっているのか大して怒られなかった。
ヤバい、瞼が重い。
久しぶりに眠気が襲ってきた。
「ゼロス?」
「わりぃ、寝る」
それだけ言うとゼロスはパタリと倒れて、しいなの膝に頭を乗せた。
「こ、こらっ」
慌てて口を塞ぐ。せっかくの安眠を邪魔しては悪い。
乱れた毛布をかけ直してやり、顔に掛かる髪をそっとどかしてやる。
「おやすみ、ゼロス」