折れたピンヒールと破れたスカート

もう何度も自分の姿はチェックした。
完璧とまでは言い難いけれど、それなりに練習だってした。

イリア・アニーミ就活中です。

今日も面接。やっと役員面接まで勝ち残れたんだから、最後まで勝ち抜いてみせ……

「うひゃぁ!」

足元から聞こえた最悪なバキって音。
バランスを崩して転倒。
そして聞こえたビリビリという音。

ついでに、突き刺さる痛い視線。

立つのよ!
いつまでも、こんな所で這いつくばってらんないわ。

「あのっ、だ、大丈夫?」
「へっ!?」

反射的に、その手を取って助け起こしてもらった。

「あ、うん。大丈夫って言いたいけど厳しいかも」

ソイツはあたしのより高級そうなスーツを着ていたけど、同じくらいの歳に見えた。
オマケに、弱そう。

「そうみたいだね」

見るも無惨な姿を見るなり、困ったように笑ったソイツに無性に腹が立った。

「ちょっとアンタ!近くのコンビニまで案内しなさいよ!」
「えっ!?」
「えっ!じゃないわよ。急いでるのよ!面接なの面接!こっちは人生かかってんの!」

胸ぐらを掴んでブンブン揺すってやった。

「あーヤメてヤメて。わかったから〜。案内するから」
ゴホゴホとむせるソイツ横目に急に冷静さを取り戻した。

「早く行くわよ。時間がないの」
「う、うん。こっち」

「これから面接なの?」

黙々と歩くのに耐えられなくなったのか、ソイツが口を開いた。

「そーよ。アンタは?用事とかないの?」

「えーっと、まぁ面接と言えば面接があるんだよね」

えへへと笑うソイツからは、緊張感というものが何にも感じられない。

「はぁっ!?あんた時間大丈夫なの?」

「うん。全然大丈夫だよ」
「ムカツクぐらいの余裕ね」

「アハハハ……。あっ、コンビニ見えたよ」

ほら、と指指された方を見れば確かに看板が見えた。

「ここまでで良いわ。あとは1人で行けるし」

「そっか。じゃあ、頑張ってね」

「あんたもね。……ありがと」

「どう致しまして。それじゃ」

ニコっと笑ってソイツはタクシーを捕まえて、さっさと行ってしまった。







その後、なんとか身仕度を整えて面接時間ギリギリに間に合った。
飛び出しそうな心臓を抑えて、扉の前で深呼吸。

「失礼しま……!」

目の前にいるのは、さっき会った銀髪の弱そうなヤツ。
思い出すのは、非礼の数々。

血の気が引いてくのが嫌でも分かった。
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