シュガーレスの恋心

その人の第一印象は?と聞かれると、あんまり覚えてない。
だけど段々と訪れるようになって、今では常連さんになっていた。


「いらっしゃいませー」

ほら、来た。
赤毛が特徴で端正な顔の、その人が。
いつも高級そうなスーツを着ているから、職業はホストだろうと直感が告げた。

赤毛ホストは必ず缶コーヒーとタバコを買っていく。むしろ、それだけしか買っていかない。


「いらっしゃいませ」

カウンターに置かれたのは、いつものコーヒーと……お汁粉。

似合わない。
似合わなさすぎる。


赤毛ホストが、ケータイを端末にかざしてチャリーンと軽快な音がなった。
「おねーさん、今似合わないとか思ったろ?」

「えっ!?い、いや、そんなことないです。珍しいなーと思っただけです」

「あれ、俺のこと覚えてくれた?」

「まぁ……はい」

こんな人とこんなに喋るのは初めてで、正直対応の仕方が分からない。

「それじゃ、お近づきのシルシにプレゼント」

すっと渡されたのは、買ったばかりのお汁粉。

「えっ!?」

本日2度目の驚き。

「まっ、良いじゃねーか。おれ、あんまりコレ好きじゃねーし」

好きじゃないなら買うな、なんてお客様に対して言えるわけない。

「遠慮すんなって」

「はぁー。……ありがとうございます」

全くもって、赤毛ホストの意図が分からない。
受け取るまでレジ前にいそうなオーラに仕方なく、おしるこを受け取ってしまった。

「んじゃ、またな」

受け取ったのが嬉しかったのか、そいつはヒラヒラと手を振って、夜の街へ消えていった。


ソイツの第一印象は?と聞かれると、あんまり覚えていない。
その後の印象は?と聞かれると、良く分からないヤツ。

もしかしたら、また変わるかもしれないけれど。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -