きちんとしたルカの性格に似合わず、ルカの机はノートやら頭が痛くなりそうな参考書が乱雑に積み重なっていた。
「……って、ちょっとー。あたしの話聞いてる?」
久しぶりに会う彼は、いつもと同じように振る舞っているようだけど、実際は無理をしているんじゃないかと思う。
今だって上の空。
「えっ?うん、聞いてるよ。スパーダが解剖されそうになったんだっけ?」
「もー良いわ」
ルカは何も言わないけど、毎日の授業やら課題やらで多忙なはずなのに、いつもあたしの都合に合わせて時間を作ってくれる。
嬉しいような、申し訳ないような。
「ごめんね。やっぱりどこか出掛けようか?ケーキ食べに行く?」
「いーの。部屋デートで。ビンボー学生は無駄なお金は使わない!これ、常識よ?」
「それって僕が奢る前提なんだね……」
「文句ある?」
「ないです」
外に出て気分転換ってのも良いんだけど、目の下にクマがある人を連れ回すのは酷だし。
だから今日は少しでも休めるように、ね?
「ねぇルカ、寝よっか?」
「そうだね……って、えええぇぇっ!?そんなイリアから誘ってくれるのは嬉しいけど…イタッ!」
「だぁーれがそんな話してんのよ!オタンコルカ!寝るのはあんただけよ!」
スパーダの影響なのか、ルカはナチュラルにセクハラ?をしてくるようになった。
叩いた手は痛むけど、心は痛まない。だって恥ずかしいのよ!
「だいたい、どっからどーみても疲れてますオーラ出してたら誰だって気になるっての!」
「えっ!?うそっ?そんなにヒドイ?」
「あんたにしては詰めが甘かったわね」
目の下を指させば、ルカは苦笑した。
「実は、ちょこっと徹夜を……」
「バッカじゃない?」
「なんで徹夜なんかすんのよ?」
「えっーと、論文が終わらなくて、でもイリアが来るから頑張ってみました」
「そんなことされても嬉しくも何ともないわよ」
「うん。知ってる。でも、両方大事だから」
あたしもそんなこと言われなくても知ってるわよ。
だから余計に不安なんじゃない。
「良い?今度から、無理な時はハッキリと断んなさいよ?」
「……それはちょっと…ねぇ?」
「はあっ?なんでっ……」
視界逆転。
下には柔らかなベッド。
「ル…カ…?」
「両方…手に入れ…た…い……」
ベッドに倒れこんだルカの寝息がすぐに聞こえてきた。
(ルカのくせに生意気!)