何度目かの寝返りを打って、眠るのを諦めた。
少し夜風に当たろうと外に出れば先客がいた。

「どうしたの?イリア。こんな時間に」

「ちょっと……ね」

明日は最終決戦。
不安にならないわけがない。

「大丈夫だよ。僕たちなら勝てるよ」

口から出るのは、ありきたりな言葉。
気の利いた言葉が掛けられるほど僕は、まだ大人じゃない。

「勝つのは当たり前じゃない。そんなこと気にしてないわよ。それよりも……」

どうやら僕の考えは、見当違いなようで。
イリアの事、分かってないみたい。

「……みんなとサヨナラするの寂しいかも」

イリアの気持ちが、胸にグサリと突き刺さった。僕は勝つことにしか目を向けていなかったことに、今更ながら気づいた。

「イリア……」

「あーあ、ガラにもないこと言っちゃった。今のナシ!忘れなさいよ!そして誰にも言うんじゃないわよ!」

言ったらタダじゃ済まないわよ、的な悪い笑顔を向けられた。

「うっ…。分かったよ。誰にも言わない」

「それより、ルカ!あんた暗い顔しすぎ!背筋伸ばす!」

バシッと叩かれた勢いと驚きで背筋を伸ばす。

「うわっ!ごっ、ごめんなさい……」

「ったく、しっかりしなさいよねー」

「うん。ごめんね?」

「で?暗い顔の原因は?」

こんなカッコ悪いことなんて言いたくない。
だけど、嘘を吐くような上手い言い訳も浮かばない。
カッコ悪さと夜風を吸い込んだ。

「えっと、僕って何にも変わってないのかなって。自分のことで手一杯で、周りを気にする余裕ないし。自分だけ突っ走っちゃってさ」

なんかカッコ悪いね、って小さく付け足した。

「良いじゃない。別に。あんたはそのことに気づいただけで十分成長してるんじゃない?それに、あたし達の人生始まったばかりよ?これからいろんなこと経験して成長してけば良いじゃない」

どこまでも真っ直ぐな考え
そして、当たり前の事。

「そうだね。僕達の未来はこれからだからね」

「そーよー。ふわぁ〜。なんか眠くなってきた」

大きな欠伸をしたイリアは、背を向けて歩きだした。

「じゃーねルカ。先に寝るわ。お休み」

「イリア!」

僕は言いたい事があるんだ。

「なーによー?」

言いたい事、言えるように成長したいんだ。
だから、これはその第一歩。

「あのっ、その……。僕も、みんなと別れるの寂しいよ。も、もちろんイリアとも


心臓が爆発するんじゃないかってぐらい、煩い。

「……ありがと」

微かに聞き取れる感謝の言葉を残して、家に入って行った。

イリアの顔も赤かったけど、僕の顔も負けないぐらい赤いはず。

明日、全部が終わったら僕は、もう一歩踏み出すよ。
ハッキリと伝えたい事があるんだ。

て、耐えきれずにもう一度抱きしめた。


初恋は実らない。なんてのは、やっぱり物語に過ぎなかった。


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