初恋は実らない。なんて、いつだったか物語で読んで、当時の僕はかなりショックを受けたのを今でも覚えている。

「ねぇイリア、君の初恋の相手って僕?」

「……うげっほげほっ!あ、あんたね…きゅ…になに言って…げほっ」

砂糖とミルクたっぷりのコーヒーが気管に入ったらしく、イリアは涙目になって僕を睨んだ。

(そんな顔も可愛いんだけどね……)
なんて言ったら、カップのソーサーが飛んできそうだから止めた。

「ごめん、大丈夫?」

「大丈夫なわけないでしょ!あんた、あたしに恨みでもあるってわけ!?」

「そんなわけないよ。ただ、聞いてみたかっただけ」

首と手をブンブン振って全面否定の意を示す。

「……そう言うアンタはどうなわけ?」

ジトリとした視線を向けられれば、艶っぽい笑顔で反撃をする。
これが此処数年で僕が習得した秘技だ。

「イリア以外にいると思う?」

「あ、あんた恥ずかしくないわけ?」

「今更隠すことじゃないからね。イリアは?」

逃げ道を作らせないように、威圧感たっぷりに言ってみた。

コーヒーを啜ったイリアは、深い溜め息を吐いて、やがて観念したのかゆっくり話しだした。

「た…ぶん…ルカよ。ほら、あの頃はまだ恋とか愛とか、そんなのよく分かんなかったし。旅が終わって、気づいたら毎日ルカのこと考えてた」


あぁー。
神様、抱きしめても良いですか?

って、僕、元神だったっけ。

じゃ、遠慮なく―――


「うぎゃっー!何すんのよっ、おたんこルカ!」

腕の中でジタバタ暴れまくられったって、足を踏みつけられたって何のその。

さらにギュッと力を込めれば、離す気がないのが伝わったのか大人しくなった。

「イリア可愛い」

柔らかな赤毛に顔を埋めれば、フワリとフローラルの香りがした。

「……そんなこと知ってるわよ。耳にタコが出来るぐらい聞いた」

「うん。だって本当のことだからね」

「あんた、性格悪くなったんじゃない?」

そろそろ解放してあげないと、イリアが呼吸困難になりそうだから仕方なく離した。

「そんなことないよ。少しづつイリアのことが分かってきただけ」

「わけわかんないっての!」

怒るイリアもやっぱり可愛いくて、耐えきれずにもう一度抱きしめた。


初恋は実らない。なんてのは、やっぱり物語に過ぎなかった。


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