この胸の痛みはなんだろう?
ううん、これは痛み?苦しみ?
どっちにしろ、どうにかしたいのこの胸の奥に引っかかる何かを。

「しーなー?さっきから視線が熱すぎて集中出来ないんですけどー?いやでも大歓迎だったりして」

「……うっそ、あたしそんなに見てない」

自分でも驚いた。ゼロスに言われて初めて気がついた。
無意識にゼロスを見ていたなんて。

「どーしちゃったのよ〜?なんか今日はおかしいぞ。特に用もないのにウチに来たり、ボケーっとしたり」

思い起こしてみれば、事の始まりは夢だった気がする。

「夢……そう、夢を見た気がするんだ」
「夢?」
「誰が出たのかとか、どんな夢だったのかは覚えてないんだけど、朝目覚めたら何だか胸が苦しくて、何とかしたくて……」

「で、おれ様のとこに来たってわけか。可愛いことしてくれんじゃん」
「な、なんでそーなるんだい!?」

途端赤くなるあたしの顔。ほんっと、分かりやすいのって損。

「んー?だって、それっておれ様を頼りにしてるってことだろ?」
「違っ…あたしはただ、あんたに会いたくなっただけで…」
「それを頼りにするって言うんだ鈍感娘」
そっか、あたしはゼロスに頼りたかったんだ。
ゼロスと話してるだけで、こんな気持ち吹っ飛んじまうんじゃないかって。
さすが、あたし。考えるより先に体が動いちまったみたいだね。

「胸に突っかかってるもんは消えたか?」
「あとちょっとかも。まだなんかモヤモヤしてる」

だんだんこの胸の痛みだか苦しみの正体が分かってきたような気がする。
たぶん、何でかは分からないけれど、こうしたらモヤモヤが晴れるような。
でも、あたしには恥ずかしくて言えないし出来ない。

「ほら、やっぱり珍しくおれ様のこと見てる。何か言いたいことあんじゃねーの?」

目で訴えってみたけど、ゼロスにはあたしがしてほしいことが分かっているようで、分からない素振り。
「あんた、性格悪くなったんじゃないのかい?ようやくまともになってきたと思ったのにさ」
「いやいや、おれ様しいなの性格改善に一役買ってるだけだぜ?」
「余計なお世話だ!」
「あっそ。んじゃおれ様、お仕事に戻るけど良いのな?」


ゼロスの背中を見たら、心臓がトクンと血液を体中に巡らせた。
自然に、それは無意識に近い感覚でゼロスの背中に体を寄せた。

「この後はどうしましょ?お姫様」
「…だ…きしめて」

やれば出来るじゃないか、あたし。

「しいながそう望むなら」
ほら、やっぱり。この胸の何かは寂しさだったんだ。
寂しくて寂しくて、どうしようもなかったからゼロスに会いに来たんだ。
それで、抱きしめてほしかった。大丈夫って思わせてほしかった。

だから、もう胸のモヤモヤは消えたよ。

「……ありがと」

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