▼ 2024.02.23 死神

「あなたには分からない」
先輩は、感情を乗せないまっさらな声で言った。
「分かってもらう努力もしねえで」
俺は、力任せに言った。
「骨が折れるのよ。分かろうとしない人に説明をするのは」
先輩は窓の外に視線をやったまま。
「分かってもらえねえってひとりで腐って、みっともねえ」
俺はあの人の目元にばかり注目していた。
「じゃあ阿散井くん、分かってくれるの。あたしがあなたの代わりになるひとを、あなたによく似た人を、それがたとえ奥様がいる人だろうお構いなしに、選んで、抱かれる気持ちを」
先輩は泣きそうな声で言った。そうして、ほらやっぱり分からないんじゃない、と、笑い飛ばした。じわじわと溢れる涙を拭いもせずに。

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