『競馬』

私にとってそれはまさに絶望と羨望、苛立ちと怒りの対象でした。


勝ってる人間を見ては羨ましがり…

負けてる人間を見つけては「同類だ」とシンパシーを感じ…

自分の現状を客観的に見ることもせず、本当はどうしたいのかという気持ちから目を逸らし、目の前の結果だけで一喜一憂する。

わずかな興奮を手にしただけで他には何も感じず見えない状態。

そんな勝てるわけのない状態で過ごす日々。

ほんの少しだけ夢を実現できるかもしれないという気分を感じるだけで、自分がいっぱしの勝負をしているかのような感覚。

伸びたゴムのような状態でだらだらと勝負を挑み、宝くじのように夢を買うだけで一向に実現されない日々。

ゴール板前だけしか緊張感のない競馬は私に何ももたらしませんでした。

もたらしたのは、ただただ絶望と羨望、苛立ちと怒り。

そして、金銭的な悲しみだけでした。


人生は単純です。

人生には二種類のものがあるだけです。

肯定的なものと否定的なものです。

私は、ふと気付いたとき競馬に関する考えや現状がもうゴチャゴチャになっていました。

とにかく『勝ってない』のです。

もう訳がわからなくなってしまっていたのです。

どうしたら良いのか見当もつきませんでした。

何かが大きく間違っている、それだけはわかっていました。

自ずとそれに気づくもの。

私は他人の馬券と結果が素晴らしく、幸せで満たされているのを見て、自分もそうなるのに値することをどこかで感じていました。

本質はそのとおりなのです。

私は幸せに満ちたワクワクドキドキできる馬券と結果を手にする資格があるはずなのです。

しかし、満たされている他人を見て羨望と嫉妬の気持ちを抱えていた私。

馬券と考えがゴチャゴチャになっていた私。

『勝ってない』状態だった私。


そんな中、ある夏の日に私はようやく気付きました。

ある思いが私の中でいっぱいになっていることに。


『もう嫌だ』
『こんな毎日から抜け出したい、変えたい』



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