どうしてこうなってしまったのだろう。
落ちた仮面、シンクの素顔。ここにいる全員がさっきまでの戦いで疲弊していて、私も、シンクも立っているのがやっと。向こうは治癒術師がふたりもいるから、私たちほどは酷くはないけど、もう戦う余力は残ってないだろう。
「ロナ、どうして…!」
「ごめんね、ルーク…」
「ロナ……」
悲痛に歪んだルークの表情、イオン様の悲しみに染まった瞳、さっきまで仲間だと思っていた私に裏切られた皆の表情は様々だ。
ティアもガイもナタリアもアニスも、皆私にどうして?と目で問いかける。ジェイドだけは普段と変わらず、まるでこうなることははじめから知っていたとばかりに冷たい視線を向けていた。
「何でだよ!」
「私の…、私の居場所はシンクだけだから………っ」
隣にいるシンクの傷だらけの手をとって、私は皆を見据えた。
フォミクリーで作られた私たち。
私は初期の実験作、シンクは導師の代わりとして。けど、出来損ないとして生まれた私たちに居場所なんてなかった。
始めに私がヴァンに利用価値があると見なされて、次にシンクが来た。その時彼の何もない空っぽの瞳を見て、あぁ、私をわかってくれる人がいたんだなって思った。
レプリカという共通点、誰にもわからない痛み、お互いの隙間を埋めようと私とシンクは求めあった。そして惹かれた。
だから、
「…ロナ」
「うん、いいよ…」
裏切っても、敵だとしても、一緒にここを出よう、と手をさしのべる皆から後ずさる。
一歩、二歩、…三歩めは空を踏んで、ぐらりと私たちの体は傾いた。
「ロナ、」
「なぁに?」
「好きだよ」
「私もだよ、大好き、シンク」
手を繋いで、二人一緒に地核へと飲み込まれる。
死んじゃうな。これで終わるんだ。
だけれど、シンクも私も、今までで一番幸せな笑顔を浮かべているに違いない。
落ちる落ちる、まっ逆さま。
もし、次に生まれてくるとしたら、どこにでもいる普通の女の子と男の子で、笑いあえてたらいいな。
end