ツキアカリ
ほらね、やっぱり来ない


教室の時計の針は午後9時を示している。山本君、獄寺君、沢田君がこの学校に集合する予定だったのが8時半だったからそれから30分も過ぎてるんだ。とっくに私の居るこの教室まで来てもいいはず、なのにここには誰も来る気配がない。

少しは期待してたんだけどな…

何となく悲しくなった気持ちを誤魔化すように、首にかけている鎖を外してそれに付いていた指輪を月の光にあてると、はめ込んである石が綺麗に光る、これはどうやら私の家に代々伝わっていたものらしくて、死ぬ間際まで身につけていたからなのか、それとも両親が私の棺にこれを入れて埋めたからなのか原因はわからないけどこの指輪は実体。私は実体があっても普通の人は見る事ができない。けど、この指輪は気をつけていないと普通の人にも見えてしまうという厄介な代物で、普段は、死んだとき着ていたから今も制服なんだけど、そのポッケに入れたり首から下げて服の中にいれるとかして隠している。そうすると見えないんだよね。今は誰もいないから……。指輪をチェーンからはずして、それを左手の中指にとおす。指輪は私の手で月の光を受けて輝いて、すごく綺麗だ。なんだか見ていると吸い込まれそうで、私はそっとそれを指からはずした。すぐ首にかけてしまうのもなんだかな、と思ったから机の上に置こうとした時、教室の戸が開いた









ツナが人影を見たのはこの教室だったよな?


オレはあの後ツナと獄寺と別れ、全力ダッシュで3階へと向かった。そして、ツナが人影を見たという教室の戸を開け中に入ったんだけど


「誰もいねーな…」


教室はカラッポ、人影はツナの見間違いだったのか?とりあえず、もう少ししたらツナたちもここに来るだろうだから、教室の中で2人を待つことにした


「明るい、な…」


廊下と階段は足元がさっぱり見えないほど真っ暗だったのに、ここは足元どころか黒板の字さえ読み取る事ができる。きっと窓から月の光が差し込んでるからなんだろーな。そんなことを思い窓の方へと近づく、夜空に輝く月は少しかけていて満月ではなかった。

……そーいや、幽霊は満月のときにしか出ねぇんだっけ

昨日が満月だったなら、今日出るわけねぇじゃん…。やっべ…、オレ肝心なこと忘れてた…。ツナたちにあやまんねぇと
そんなことを考えていると、床の上になにか光るものが落ちているのが見えた


「なんだ…?」


手にとって見たら指輪だった。


「なんでこんなとこに?」


普通学校に指輪なんてあるか?持ってきてとしても見つからないようにするだろうし、机の上に置き去りにすることもないだろう。オレがその指輪について色々と考えていると


「それ…、私の……」


振り返ると、そこには見たことのない制服を着ている女の子がいた。見とれるほど綺麗な顔立ちをしている。いきなり話しかけられてオレは心臓が飛び出すかと思うくらい驚いた。でも、話しかけてきた彼女の方もすごく驚いた顔をしている。変じゃないか?まるでオレに話しかけても絶対に振り向いてくれないとでも、思っていたんだろうか?その子は何も話さない、オレも黙り込む。教室の中は静まり返る、沈黙を破ったのは彼女の方だった。


「私のこと…、見えるの?」
「は……?」


オレは思いもよらない質問にどう答えたらいいか、わからなくなってしまった。見えるかどうかって…?そりゃ…


「ふ、普通に見える、ケド…」


そう答えると、彼女は目をまん丸にして驚いた。


「その制服…、並中じゃねぇよな?名前なんつーんだ?」


オレがそう言ったら、彼女はさらに驚いた顔をして


「名前は…、彩乃美琴」
「美琴なっ!オレは…」
「知ってる。」


オレが自分の名前を言おうとしたら、美琴にさえぎられた。


「山本武君…でしょ?」
「なんでオレの名前知ってんだ…?」


オレのその質問に美琴は答えようとした時、


「山本っ!!」
「ツナ?」


ツナがいきなり教室の戸を開けて入ってきた。ツナの後ろで獄寺が何か言っている。


「ゴメンっ!なんか見つかっちゃったみたいで…はやく逃げよう!!」


そう言ってツナがオレを引っ張った。ここに居たら美琴も見つかるんじゃ…そう思ってオレは美琴を見たが、美琴は手をふってバイバイと言っていた。オレはツナに引っ張られるがまま教室を後にした。風紀委員に捕まらず学校を抜け出すことはできたけど、外に出てもまだ追いかけてくるみたいでオレたちは帰りはバラバラに走って帰った。無事に家に着いて部屋に入った時、オレは大変なことに気がついてしまった。


「やっべ…、指輪持ってきちまった…。」
4/6

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