ナナフシギ
並森中学校七不思議の一つに、こんなのがある「満月の夜、教室に入ると女の子の霊がでる」


「そんなのウソにきまってるよなぁ」


現在の時刻、午後七時半。本来なら全ての生徒はもう校内にいないはず。


「だよなー、今どき信じるヤツいんのかなぁ?」


なのに男子生徒二人は、部活で遅くまで残っていたようでこんな時間にも関わらず玄関につづく廊下を歩いてる。私からは姿が見えないけど、足音でだんだんこの教室に近づいてくるのがわかった。


「あっ!そういえば今日満月だったよな」
「幽霊の出る教室ってそこだよな?」
「ちょっとのぞいてみるか!」


なんて、好奇心一杯って感じの声が聞こえた。全くもって嫌になる。どうせ、きっと同じなんだから。ため息をついて窓から夜空を見上げれば、明るい月の光が目に入ってくる。私は月の光に照らされてるはずなのに、床を見るとやっぱり足りないものがある。あーぁ、なんだか悲しいな。その時突如として開く扉、入り口の方を見れば人影が二つ。


「ほら、どこにもいな…」


どこにもいない。そう言いかけた言葉を途中でつまらせて、凍りつく表情。ほら同じだ。


「「うわぁ〜〜〜〜っ!!!」」


私を見た人は何時もこう……。床を見てもう一度ため息をつく。足りない、足りないんだ。普通ならある影が私には足りない


「いつまで私はこうなの?」


私の呟きは誰もいない教室に吸い込まれて消えた。
















朝から教室は、ある話題で盛り上がっていた。


「本当に出たんだってー」
「七不思議の最後のヤツ?」


ガラガラ……


「あ、京子おはよー。」


私のすぐそばに居る黒川さんが、今教室に入ってきた笹川さんに手を振る。


「花、おはよう」


笹川さんは私のすぐ隣に来て、私に見向きもしないで黒川さんに話しかける。いや、見向きもしないというのは嘘。何故かというと、私は彼女に見えていないから。だって、私は………


幽霊だもの


もうとっくにこの状況になれた。そりゃ何年もここに居たらなれるよね。普段私は普通の人には見る事ができないし、たまに私のことを見れる人がいても、一瞬だったりかかわらないようにする人がほとんどだ。現に昨日だって私を見て逃げた男子が居た。今日彼らの近くに行ってみたけど、なんにも見えていないようだった。せっかく話し相手が見つかると思ったのに…。そう、私はただ話し相手が欲しいだけ。この姿になってから私と話せる人なんてほとんど居ない。まったくもってつまらない。


「はぁ…。」


ため息をついたその時


「うおっ!遅刻3分前だったな!」
「遅刻しなくてよかったぁ…」
「あいつに捕まると厄介ですからね」

いつもの3人組が遅刻ギリギリに教室に入ってきた。そして各自席に着く、私は沢田君の後ろへと移動した


「なんか、いつもより教室が騒がしいような…」
「敵襲っすかね?」


沢田君の前に座っている、いかにも不良みたいな格好をしている獄寺君が、物騒なことを言っている。敵襲って…。さすがにこの平和な学校では起こらないだろう。


「ツナ君おはよう」
「きょっ、京子ちゃん!!」


笹川さんが私の真横の位置に来た。慌てて私はその場を離れる。なぜかと言うと、私は幽霊でも実体があるからだ。見えなくても何かに触れることもできるし、触れられることもできてしまう。これ厄介なんだんよね……。それにしても、笹川さんの挨拶だけで沢田君はあんなに慌てるなんて…笹川さんが好きだって見え見えだ。笹川さんは気づいてないみたいだけど…


「京子ちゃん、今日何かあったの?」
「あれ?沢田たち知らないんだ」


いつの間にか笹川さんの隣に来ていた、黒川さんが答える


「幽霊が出たのよ」「本当なのか?」


沢田君の隣の席…。もとい、私の前にある席に座っている山本君が驚いた顔をしている。


「幽霊ー!?本当だったら嫌だなぁ…」
「十代目!!何かあったら俺が命を懸けてお守りします!!というか」


獄寺君が目を輝かせながらそんな事を言っている。私はキミらに危害を加える気はないよ。

キーンコーンカーンコーン


「みんなー、席着けー」


チャイムと同時に先生が入ってきて話は中断され、今までたっていた生徒は各々の席に着く。今日私は窓側の一番後ろの席に座っている山本君の所で過ごす事にした。今日の彼は珍しく何か考え込んだ顔をしている。


「山本、どうかした?」


隣に座っている沢田君が心配そうに話しかけた。山本君は深刻そうな顔で沢田君にこんなことを言う


「なぁツナ…、幽霊っていると思うか?」


…………そんな深刻に考えることなんだろうか?


「えぇっ!?う、う〜ん…。どうなんだろう」
「気になんねぇか?」
「た、確かに…」


二人とも否定しないんだ。良かった、ここで否定されてたらどうしようかと思った。だって私はここにいるから


「十代目!!気になるのであれば、オレが直ぐにでも確かめてきます!!」
「えぇ!?い、いいよっ!そこまでしなくてもっ」
「つーか、どうやって確かめんだ?」
「んなの決まってんだろっ!夜の学校に忍び込むんだよ!」
「じゃあ決まりだな!」


………え、何が?
なんか嫌な感じがするけど、まさか……


「今日校門の前、8時に集合なっ!」
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