「獄寺〜」
「……んだよ」
「さくらんぼいる〜?」
「はぁ?」


大量のさくらんぼが入ったタッパを持って、獄寺の前に現れると変な目で見られた。なんていうか、うん、意味わかんねーとか思ってるんだろう。


「いや、あのですね。うちに今沢山さくらんぼがあるんですよ」
「あぁ……」
「私だけじゃね食べきれないんですよ」
「………。」
「捨てるの勿体ないんですよ」
「その喋り方うぜーからやめろ」
「うざいとはヒドイなー」


ことの次第を説明したらうざがられてしまった。まぁ、ようするにだ、簡単な話さくらんぼ処理手伝えってことだ。


「だからさくらんぼ食べてーー」
「ったく、しかたねぇな……」


文句言いつつも食べてくれる獄寺。私もタッパから一つさくらんぼをつまんで口に放り込む。甘酸っぱい味が口の中に広がった。
ただ、朝からさくらんぼばっか食べてたから、いい加減にこの味に慣れてきてしまった気がする。というか飽きた。


「そう言えばさー」
「なんだよ」
「さくらんぼのへたをさ、口のなかでむすべるひとっているよね」


私はおもむろに食べれないへたを口にいれて、舌を使って結ぼうとした。……が、これがまたうまくいかない。


「うーーん?お、あーだめだっ!うまくいかない」
「アホらし」
「そーゆー獄寺はどうなのさ?」


どうせできっこないに決まってる。そう思って挑発すれば獄寺も同じようにへたを口に含む。ところが、


「ほらよ」


そう言って差し出された舌の上には、結び目がついたさくらんぼのへたが!!


「えぇ!?すごっ獄寺すごっ!!」
「お前が不器用なだけだっつーの」
「そんなことないよ!普通こんなことできないって!!」


結び目がついたへたがゴミ箱に捨てられるのを眺めながら、私はただ単に感動していた。そこでふと思い出す。


「あのさ、へたを口で結べる人ってさ」
「ん?」
「キスするのが上手いんだって」
「んなぁっ!?」


突如顔をさくらんぼみたいに真っ赤に染める獄寺を見て、私は腹を抱えて笑いこけた



純情チェリー



あ、さくらんぼのへた結べた!私もキス上手いのかな?
なんなら確かめてやろうか?

今度は私が染まる番


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