「う゛お゛ぉい、美沙いるかぁ゛?」
「な゛ん゛でずが?」
「うお、どうしたぁ?その声」


部屋の前から呼び鈴よりもうるさい声が聞こえて、がんがんする頭を押さえてドアを開けたら、今日二番目に会いたくない人がそこに立っていた。ちなみに一番は王子。


「がぜ引いだんでず、げほっ、がほっ」
「う゛お゛ぉい、大丈夫かぁ!?」
「うるざい、頭ひびぐ……」


大きな声がぐわんぐわんと頭に響く。あぁ、だから会いたくなかったのに。
文句を言えば慌ててボリュームを下げたスクアーロに、こんな小さい声で話せたんだと思った。


「で、な゛んが用?」
「任務だぁ、その様子じゃ無理そうだけどなぁ゛」
「ごめ゛ん゛、げほっ」


喉がむず痒くてたまらない。
今すぐ喉を開いてかきむしりたい衝動に陥るけど、やめた。なんか想像したらグロい。それに、こんなこと言ったらベル辺りが嬉々としてやりそうで怖い。


「薬は飲んだのかぁ?」
「いいえ゛、飲んでまぜんよ゛」
「う゛お゛ぉい!何で飲んでねぇんだ!?」
「う゛るざい…、薬がないがら!」


いきなり音量MAXな声に殺意を覚える。こっちは病人なんだからホントに静かにしてもらいたい。
部屋の中をのぞいたスクアーロが、テーブルの上にあるものを見つけて、許可もとらずに部屋に上がり込む。そこにあった薬の瓶を見て「薬あるじゃねぇか」とこっちに瓶を突きつけた。


「な゛、何のごどでずが?」
「思いっきり目ぇ逸らしてるぜぇ?」
「うぅ゛……、苦いのぎらい」
「ガキか、おまえは」


心底呆れた様子で、ため息をついてからジロリと私を睨む。きっと早く風邪治してさっさと任務に戻れるようにしろとか思ってるんだろう。スクアーロは水差しから組んだコップ一杯の水と薬を三錠差し出してきて、仕方なく私はそれを渋々受け取った。のを、瞬時に窓の外に投げたら怒鳴られた。そしてまたすぐに三錠瓶から取り出されて私の手に渡る。いっそ瓶ごと投げ飛ばそうと思ったら、スクアーロが薬の瓶を取り上げてしまった。ちっ。
飲みたくない、薬なんか飲みたくない。
でも、スクアーロは私がこれを飲むまでここにいるらしく、部屋から出ていく気配がない。

うん、ここは作戦Bでいこう。


「ズグアーロ゛〜」
「あぁ゛?」
「どりゃ゛!!」


油断して返事をしたスクアーロの口のなかに薬を放り込んで、うん、私ナイスコントロール!いきなりのことで驚いてる隙をついて薬の瓶をかっさらって窓の外へとぶん投げる。これで薬はなくなった、もう私に飲ませるやつはない。あんな苦いの口に入れてたまるか!


「ぐずりなんで飲まないもん゛…んぅっ!?」


いきなりぐいっと腕を引っ張られたと思ったら、至近距離に銀色の髪があって、何がなんだかわからないうちに口の中に広がる苦味。思わず飲み込んじゃって、咳き込みながらスクアーロを目の前から退けた。


「何ずんのざ!!」
「手元に残った薬がこれだけだったんだぁ、仕方ねぇだろぉ゛」
「しんっじらんない゛!」


だからって口移しで薬飲ま…、口移しっ!?
平然とした顔で水を渡してくるスクアーロに対して、私はどんどん体内温度が上がっていくのを感じた。そしたら、スクアーロがにやりと笑って、熱でもあんのかぁ?なんて聞いてきたから空になったコップを投げつけといた。










その後直ぐに、風邪は治って、変わりにスクアーロが寝込んだ。
それでも、「お前は薬飲ませてくれないのかぁ?」なんて余裕でからかってくるから、オブラートを投げつけてきてやった。

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