「どうして君は群れるんだい?」
「え?」


放課後、校舎裏で呼び出しなんてベタなことをやっていた生徒をシメて、被害者の生徒を家まで送って行った帰り、忘れ物を取りに教室に戻った時、誰もいないと思っていたそこに雲雀さんがいた。
会釈して自分の机から忘れ物であるファイルを取って、早々に教室を立ち去ろうと今まさに廊下に出ようというところでいきなりこんな質問をされて戸惑う。


「群れるって…、私はそんなつもり」
「今日だってそうだ、わざわざ生徒を送ってみたり、君の回りはいつも人で溢れてる」
「普通じゃないですか?」


まぁ、困っている人をほっとけないたちだから、いじめとかも見てられなくて、あっちゃこっちゃに首を突っ込む度に知り合いが増えて、さらには強いとか言われちゃって喧嘩の仲裁や、はたまた人生相談的なことも頼まれるから、普通と言うにはちょっとあれかもしれないけども。


「君は強い、なのになんで弱いものたちと一緒にいるんだい?」
「弱いものって、私の回りにいる皆が?」
「他に誰がいるんだい?」
「………確かに皆少し臆病だったりしますけどいい子です」
「僕は見ていてイライラするけどね」


その言葉を聞いて私はムッとした。
イライラって……、そんな言い方しなくてもいいじゃないか。ムカついたので帰ろうと雲雀さんに背を向けたら、「君って変わってる」なんて言われて、それを聞いて私は「変わってるのはお前だ!」と思わず言いかけ慌てて口を塞ぐ。それから咳払いして思ってることを全て吐き出した。


「私から見ればあなたの方が変わってます」
「どうして?」
「なんで雲雀さんは一人でいようとするんですか?」
「群れるのが嫌いだからさ」
「なんで嫌いなんですか?」
「嫌いなものは嫌いだよ」
「理由になってませんよ!!」
「じゃあ、君はなんで群れようとするんだい?」


ため息をつけば、今度は自分の番とばかりに似たような質問をされる。
まぁ、最初に聞かれたことと同じだから今度はちゃんと理由を考えて答えた。


「傍にいないと守れないから」
「なんで守る必要があるのさ」
「弱いものを守るのは強いものの責務だからです」
「へえ……」
「それにいくら強くたって必ずどこかで他人の手が必要になります、そのための仲間です」


私はそう教わった。
小さい頃、喧嘩っ早くて強くて怖がられて、ひとりぼっちだった私に力の使い方を教えてくれた人が、自分じゃなくて他人を守るために力を使いなさいって言った。だから今の私がある。
でも、これを雲雀さんに言ったってきっと理解してくれないだろう。だから私は今度こそ本当に帰ろうと、何があっても立ち止まらないと心に決めて廊下へと出た。すると、くすくすと笑い声が聞こえて、雲雀さんが私の隣を通りすぎていった。その去り際に聞こえた一言にドキリと胸が高鳴って、思わずその場に立ち止まる。


「君、面白いね、気に入ったよ」


なんて……、高鳴る胸にそっと手をおいて、小さくため息をしてから厄介な人に捕まってしまったと思った。









自分とは違うものに惹かれる、分かり合えない、だからこそ気になる…、それがヒトの性でしょ?
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