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 とあるギルドのアジト、新しくもない板張りの床を軽い足取りで歩く少年が居た。
 燃えるような赤い髪に黒を主体とした服を纏い、背に通常より大振りな剣を背負った少年。
 彼の名前はイツキ。このギルドに入ったばかりの新人ではあるが、剣の腕もたつ期待の新人であった。
 そんな彼が今向かっているのは彼の所属するギルドの長である、ロスターの部屋である。140をとうに越している老人であるが、その知識量、戦闘経験は並外れたものがあり、彼のまとめるギルドは国王にも信頼が厚く、護衛任務などが任されることもしばしばあるほどだ。
 そんなロスターも一目を置いているのが件の少年、イツキである。

「ロスターさん、イツキです。」

 ロスターの居る部屋へと辿り着いたイツキは扉をノックしたあと、名を名乗り扉を開いた。
部屋の中には中央に置かれた椅子に腰掛けるロスターの他に、目深くフードを被った性別不明の人物が座ってい た。
 ロスターは入ってきたイツキに目線で己の隣に立つように言うと、目の前の人物に視線を戻した。

「この少年はイツキと申します。まだ若いですが力はある。入団したばかりなので王国騎士団に顔も知られてお りませぬ。貴女のお望みの人物かと思いますが……」

 ロスターは目の前の人物にそう話すと、その人物はしばらくイツキを見た後ゆっくりとフードを取り払った。
フードの下から現れた顔立ちを見てイツキは素直に驚いた。

「確かにそうかも知れません。ありがとう、ロスターさん。…初めましてイツキさん。私はレメンカ。貴方に人 捜しを手伝って欲しいのです。」

 フードの下から現れたのは、ピンクの長い髪を一つに 結んだ幼さの残る顔立ちの少女だったからだ。
 レメンカと名乗った少女は凛と背筋を伸ばし真っ直ぐにイツキを見ていた。

「は…君みたいな女の子が人捜し…?差し支えなかったら理由を教えてくれないか…?です」

「それは…すみません、言えないのです。どうかお手伝いしていただけませんか?」

 呆然としたままのイツキに対し、レメンカは凛とした姿勢のままゆるりと首を傾げた。
イツキは何が何だか分からず、助けを求めるようにロスターを見た(余談だがイツキは相当なバカである)。
ロスターは何も言わずただ静かに首を縦に振ったそれを見たイツキは溜め息を押し殺すとレメンカの前に跪い た。

「どんな相手でも、依頼主のお頼みとあらば、断る理由はありません。このイツキ、貴女様のお役に立って見せましょう。」

 そう言い頭を垂れるイツキを見て、レメンカは焦ったように手を大きく振り、そんな畏まらないでくれと言った。

「確かに私と貴方は雇い主とその護衛となるのかも知れません。ですがそのようにかしこまる必要はありませ ん。むしろ、もっと親しくお話しして下さいな。」

 そう言いにこりと笑むレメンカを見て、イツキはホッとしたように胸を撫で下ろし跪いていた体制から身体を 起こしニカッと笑んだ。

「マジで?良かったー!オレ畏まってるのとか苦手だからさ!そう言ってもらえてマジ助かるわ!これから宜し くな!レメンカ!」

「イツキ……お主、例え依頼主からお許しがあったとは言え、その態度はなんじゃ…」

 イツキの頭にロスターからの拳骨が下ったのは、言うまでもないだろう。
 ロスターからの拳骨を受けたイツキは殴られた頭をさすりながらレメンカの話を聞いていた。とは言っても多くは語れぬと、探し人が居ることのみしか、イツキが知ることは出来なかったが。
レメンカが探し人の写真を取り出し、この人物を捜すのを手伝って欲しいと言った。

「名前はエクセルリア。わたしの師匠です。」

「エクセルリア……見たことない顔だな……ロスターさん、知ってます?」

「……いや、知らんの」

 写真を見ながら尋ねるとロスターは緩く首を振った。うーんと頭を掻きながら考えるイツキを見てレメンカは 少し苦笑いをした。
どうやら頭は悪いらしいと認識したようだ。

「イツキよ、ひとまずタツヤを探してはどうだ?あいつはよく旅に出ておる。もしかするとこの人物と会ったことがあるやもしれん。」

「タツヤか……今ちょうど帰ってきてるしな……よし!行くか!レメンカ!」

 ロスターの提案にしばしの間考えた後、イツキは一度大きく頷きレメンカに笑いかけると右手を差し出した。
一瞬呆けた表情をしたレメンカだったが、手の意味を理解するとクスリと笑み手を取った。

「これから宜しくお願いします。イツキさん」

「こっちこそよろしく。レメンカ」

長くて壮絶な旅が、今幕を開けた。

















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