どうしよう…。

池袋の人混みに紛れながら、一人頭を抱えた。

自販機や標識を見つけては、金髪にサングラスのバーテン姿の男を思い出すなんて……。

おまけに宙を舞う自販機を探すように視線はしょっちゅう斜め上をさ迷う。
お陰で周囲があまり見えなくて、只でさえ不慣れな都会で人にぶつかる回数も増えた。

…これを日常と呼ぶのはどうなのだろう。

視線を空に向けながら考える。


……今、何してるんだろう。

再び件の相手を思い浮かべていると、ガシャーンッとどうにも派手な音が背後から上がった。
次いで聞こえたいつもお馴染みな情報屋の名前を叫ぶ声に、思わず吹き出しそうになる。

そんな風に悠長に構えていた状況は、背後から迫って来た男に周り込まれ盾へと用いられた瞬間、一気にピンチに切り替わった。
紛れもなく先程名を叫ばれていた男のせいで。

その光景を目にした途端、標識を振り回しながら男を追っていたバーテン姿の男の、サングラスに隠された瞳がギラリと光り更なる憤りに彩られた。

それを空気で察知して、あぁ、僕…死ぬのかな……と諦めに似た感情を抱く。

これこそ非日常というべきもので、誰かさんは慣れれば日常になるというけれど…そんな日はくるのだろうか。というより、こんなのが日常になる程しょっちゅうこの二人に挟まれるのは御免被る。

賑かな二人が現れる前まで考えていた思考をどこへやら、密かに胸中で呟いた。






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