色々なもしもの話。
故郷が焼き払われず捨て鉢になってないから三成にも会ってない。けど名前は左近。
石田主従と真田主従の入れ替えみたいな話。
キャラだけ借りた別物だと思っていただければ。
賭博のなんやかんやは捏造です。
博打に命を賭けるなんて馬鹿のすることだ。
負けりゃ落ち込むし、勝ちゃあ嬉しい。
勝負に出る時のあの高揚感が、生きていると実感の湧くあの瞬間が好きだ。
運がついていると、こんなどうしようもない自分でもまだ捨てたもんじゃないと思える。
場が立ったと情報を得て早速そこへと赴くと、部屋の一角がやけに目についた。
朱色の着物に栗色の髪。こちらからでは顔を見ることは出来ないが、姿形からしてここいらじゃ見かけたことのない奴だ。
ぴしりと背筋の伸びた後ろ姿からでも滲む空気は、淀んだこの場ではかなり浮いている。
――ありゃいいカモだ。
どうしてまたこんなところに来たのかなんて知ったことではないが、弱いくせに意地になって勝負を重ねているなら自業自得ってもんだ。
鼻を一つ鳴らして、もうそちらには興味が失せたとばかりに自然と止まっていた歩みを再開する。
「いや、某もう賭けるものがありませぬ故…」
「その首からぶら下がってる、そりゃ何だ?」
「それを賭けりゃいいだろ」
「これは、これだけはなりませぬ!」
「……」
いやでも耳に届く声に、先ほどの新参の男がいる方に目を向ける。
言葉ぶりからするに、何か値打ちがあるものなのか、それともそれほど思い入れのあるものなのか。
……ちょいと覗いてみますか。
湧いた好奇心に、手慰みで弄っていた賽子を仕舞い、腰を上げる。
なんというか、華のあるお人だな…というのが、その男の顔を見た一番の感想だった。
まだ幼さが残るような、女に間違えられてもおかしくないような可愛らしい顔立ち。
それだけに、その首からぶら下がる――恐らくは例の物。六文銭が、ひどく不釣り合いに思える。
あの世への渡し賃…ね。なるほどこれは。
「ちょいと兄さん方、その勝負、この俺が引き受けた!」
どどんと啖呵を切ると、必然的にその場にいた全員が俺を見ることになる。
自分に向けられた大きな栗色の瞳が真ん丸に瞠られているのが、なんだか気分が良かった。
強気に言ってはみたが、俺だってなにも博打に強いわけじゃない。下手の悪好きとはよくいったものだ。
今更ながら、これで負けたら格好悪いよな、なんて考えが過ぎるが、不思議と負ける気はしなかった。
ニッと口角を引き上げる。まるで勝利を確信するかのように。
「島左近、入ります」
「島殿、この度は誠にかたじけのうござった。何かお礼をさせて頂きたいのですが…」
「いいっスよ、そんなの」
「そういうわけには参りませぬ。某、恩を受けて礼を欠くような真似は出来ませぬ」
「そちらさんもしつこいっスね。俺は別にあんたを助けたんじゃなくて、イカサマが許せなかっただけっスから」
「如何様…?」
「気付いてなかったんスか?」
勝負にはにらんだ通り勝った。しかも、かなり一方的に。
男をカモにしていた奴らから逆に金を巻き上げ、厄介ごとになる前に賭場を後にした。
後をついて来た男に儲けの半分を渡して、今度からは気を付けろと一言注意してから格好よく去ったつもりだったのだが、なにがどうしてこの有り様だ。
しかも、イカサマに気付いていなかったとあっては、そんな調子で大丈夫なのかと寧ろ心配になる。
というか、先ほどから向けられている端から人を疑うことを知らないようなこの真っ直ぐな目…苦手だ。
顔は悪くないのに、絶対にわかり合えない人種だと感じる。
聞けば、道端で困っているから助けてくれと言いくるめられ、のこのこついて行った結果があれだ。全く以て危機感がなさ過ぎる。こんな世でそんな体たらくでは、どれだけ命があっても足りやしない。
「如何様など、言語道断にござる。勝負は正々堂々真っ向からするもの。男のくせになんと卑怯な…」
「ちょいと、落ち着きなって」
「これが落ち着いていられるか!某今一度…」
いきなり怒気を露わにした男に、何事かと仰天する。
今にも賭場に引き返そうとする男の手を慌てて掴んだ。
文句を言おうとしてか振り向いた男は、俺の顔を見てハッとしたように息を呑んだ。
「も、申し訳ありませぬ!助けていただいた方にこのような…」
「いいっていいって。俺もそちらさんと同意見っスから」
男は狼狽えながら頭を下げる。どうやらもう怒りは消え去ったようだ。
素直というかなんというか…この猪突猛進な危うい感じが苦手意識に引っかかる。
「しかし、島殿はお強いのでござるな。如何様相手にああも勝ってしまうなど」
「そんなことないっスよ。あれは俺も驚きました」
「島殿に助けたつもりがなくとも、結果的に某は助かりました。なので、やはりお礼を…」
「あぁ、もう、またそれっスか…。ほんと、いいですから、気にしないでください、それじゃ!」
「島殿!」
「あっ、もうこの辺には近付かない方がいいっスよ!」
話が振り出しに戻りそうな気配に、いい加減付き合っていられないと身を翻す。これは逃げなんかじゃなく、良識ある身の引き方だ。
振り向きざまに今一度念を押すように忠告を残して、その場を駆け出す。
恐らく追いつかれることはないとは思うが、知ったる中でも複雑な道を選びながら。
確かに俺は近付くなって言ったのに、これはアレか、幻覚か何かか?
「ちょいと、あんた」
「っ、島殿!」
「どうしてまたこんなとこに…」
「兄ちゃん、まだ勝負の途中なんだ。引っ込んでてもらえるかい」
「……」
あぁ、俺はいったい何をやってるんだ。
「やはり島殿はお強うござる」
「…で、どうしてまた来たんです。そちらさん、学習能力ないんスか?」
「それは無論、島殿にお礼をするためでござる。あそこに行けばまた会えると思いまして」
暗に俺があの時話を聞いてやらなかったから、俺のせいだって言いたいのか?
いや、この人はそんな人じゃない…と否定した先から、自分は何をわかったようなことを言っているのかと頭を振る。
「ほんと、しつこすぎっスよ…あんた」
「真田幸村」
「は?」
「あんた、ではなく、某、真田幸村と申します」
「あぁ、そっスか」
いきなり詰め寄られ、その勢いに思わずたじろぐ。
つか、何でそんな顔で俺を見る。
「それでそちらさん……真田さんは、」
ジッと真っ直ぐに自分を見ていた瞳が、名を口にした途端に細められる。
可愛らしい顔に、人懐こい笑みが浮かぶ。名を呼ばれたことの何がそんなに嬉しいのか。
なんかこの人、忠義に厚い犬みたいだ。
「俺が悪者で、助けた代わりにその六文銭を渡せとか言い出したらどうするんスか」
「島殿はそんなことは申しませぬ」
「どうしてそんなことが…」
「二度も某を助けてくれた、島殿は良い御仁です」
「……」
当初から変わることのない澄んだ真っ直ぐな目。
ちりつくような苛立ちが、胸を過った。
「真田さん、可愛い顔してるんだから気を付けないと駄目っスよ。金がないなら体で…なんて、男でも珍しくないんスから」
「某、肉体労働は得意でござる」
幸い人目のない路地だ。手近にあった家屋の壁に真田さんを追い詰め、逃げられないように壁に手を付いて腕の中に閉じ込める。
十分意味は伝わるように言ったはずなのに、真田さんは胸元で拳を握り目をきらきらと輝かせた。
まるで穢れを知らないようなそれに、胸の内に燻る黒い感情と、僅かな好奇心が綯い交ぜになって湧き起こる。
「そうじゃなくて、こういう意味っスよ」
顔の距離が近付いても、真田さんは不思議そうに自分を見るだけ。
その唇が触れ合った刹那、閉じられることのない栗色の瞳が目一杯見開かれ、驚きに彩られる。かと思えば、ドンと胸元に強い衝撃を伴い突き飛ばされた。
「ししし、島殿!何をなさるのか」
「何って…」
それでも少しはスッとした気分で顔を上げれば、そこにあった真田さんの顔は目にも鮮やかなほどに真っ赤だった。
「このような…は、破廉恥でござる!」
「は…」
口元を手で押さえ、わなわなと震えながら一吠えしたかと思うと、真田さんは止める間もないほどの俊敏さで踵を返し駆け出した。その背が小さくなるのを追いもせずただ見送る。
破廉恥?何だそれ。何だよその反応。
何もかもが予想外で、自分が生娘に手を出したような、悪いことをしでかしたような気になる。
あまりに純粋過ぎて、寧ろ面白いくらいだ。けど、漸くそう思ったところで、今度こそもう会うこともないだろう。
…それならいっそ、名前なんて知らないままで良かったのに。
「真田幸村…ね」
「…って、何でまたいるんスか!?」
「何度も申しておりますように、お礼をしておりませぬ故」
「だからって、何で毎回毎回カモられてるんスか!」
「鴨?某は鴨では」
「はいはい、もうそれはいいっスから」
「?」
何だこれは。本当に、いったい何だというのだ。
おかしい。何がおかしいって、本当に色々あるけれど。
本来、俺はこんな風に勝ちが込むことはない。弱くもないが強くもない。
それがどうしてこうも…まさか、知らない間に強くなったとか?
悲しいかな、それはないなとすぐに否定する。
そして、流れるように隣にいる真田さんをちらりと見やる。
……いや、何を考えようとしてるんだ俺は。
「島殿?」
「真田さん、もういい加減にしてもらえません?ていうか、前回のあれで懲りたでしょう」
三度の救出劇を演じ、そろそろあの賭場で出禁を食らってしまいそうだ。
前回の話を切り出せば、その時の記憶が蘇ったのか、真田さんの顔が再現のように真っ赤になる。
――ほら、その顔が。
「それとこれは話が別にござる。あのようなことは、もう無しにして…きちんとしたお礼をさせて下され」
「…わかりました。けど、すぐにはちょっと思い付かないんで、時間を貰えます?」
「承知致しました!」
何でそこで嬉しそうなんだろうか、この人は。
人の言葉を真っ直ぐに受け取るこの人は、猶予期間中に俺が逃げおおせるなんてことは考えもしないんだろうな。
そんで、また柄の悪い奴らに捕まって、今度こそ…なんて、馬鹿馬鹿しい。
真田さんを見ていると、これまでなかった感情が揺り動かされるようで、それがどこか心許なくて厄介だ。
「島殿、少しお時間よろしいでしょうか?」
「?」
何かを企んでいる気配も、そういうことをする人だとも思っていなかったから、これまでの経験からしつこくされる前にと頷いた俺は、鼻をつく甘ったるい匂いに翻弄されていた。
何を思ったのか、ついてくるようにと促した真田さんが出向いたのは、華やかな装いをした甘味処だった。
「どうしてまた急に」
「某、初めて島殿にお会いしたあの日、本当はここに来ようとしていたのです。しかし、あのようなことになってしまい…」
「はぁ」
「お礼がはっきりする前に、軽くお礼をと思いまして。ここは某の奢り故、好きなものをお選び下され」
そもそも、そんなまどろっこしいことをせずともそれがお礼でいいのではないかとも思ったが、言ったところで納得はしないのだろうから大人しく口を噤むことにする。
代わりに、なんとはなしに辺りを見回しながら、気になっていたことを尋ねる。
「真田さんは、甘いものが好きなんスか?」
「大好きでござる!」
向かいの席に座る真田さんが、意気込むように身を乗り出してきて、驚く。
この外見で甘味好きって…まんま子供みてぇ。
そんな相手に騙し討ちのように接吻した自らを思い、不覚にも顔が熱くなった。
「島殿?」
「あ、すんません。じゃあ、真田さんと同じものを」
おかしい。真田さんに会った日から、俺は何度その言葉を脳裏に描いただろうか。
何で俺は、こんなにも頻繁に真田さんのことを思い出してるんだ。
あの甘味処に行った日から、もう半月…その間一度も真田さんに会っていないから…だから?
考えさせて欲しいと言ったから時間を与えているつもりなのか、あれから真田さんはふつりと姿をみせなくなった。
――おかしいといえば、もう一つ。
あれだけ込んでいた勝ちが、この半月ほどはからっきしで。
危うく素寒貧になるところだ。
腕が上がったとか落ちたとか、運がついているとかいないとか。そういう問題じゃない気がする。
……真田さん、今頃何してんだろ。
そうして、ふとした瞬間に真田さんの顔が浮かぶ。特に、最後に見た甘味を幸せそうに頬張る極上の笑みが。
ってか、俺、真田さんのこと何にも知らねーし。
真っ直ぐでお人好しで甘味が好きってことくらいしか。
真田さんがこっちに来ないと、会うことも出来ないんだな、なんて思ったら無性にじっとしていられなくなった。
思い立ったら即行動。俺は、立派な門扉の前に立っていた。
まさか、真田さんが武将だったなんて…どこまでも意外過ぎる。
けど、あの真っ直ぐな瞳に宿っていた強い何かの正体は、これで合点いった。
「ハッ、ぅおりゃっ!」
いきなり突撃するわけにもいかないし、と暫し門と睨めっこをしていたところ、中から覚えのあるより力強い声がした。
声のする方に回り込み、辺りに人の姿がないことを確認して、自慢の身体能力で塀をよじ登る。
すると、いつもの朱色の着物ではなく、袴姿で槍を奮う真田さんの姿が目に入る。
普段と違い研ぎ澄まされた空気を纏い、舞うようなそれに思わず魅入ってしまう。
…っと、やばいやばい。このままじゃ、いずれ人目についちまう。
「さーなださん」
「!島…どの」
「ちょっと、今から出てきてもらえます?」
声をかければピタリと真田さんの動きが止まり、こちらを向いた表情はみるみる驚きに塗り替えられる。それは俺の知っている真田さんの表情で、小さく胸を撫で下ろす。
門の方を指して言えば、真田さんはまだ状況が理解出来ていないのだろう。目をしきりに瞬かせながらも、素直に頷いた。
「どうしてここが…」
「方法は言えないっスけど、ある筋に調べてもらって」
「何故そのようなことを」
「真田さんのことが知りたかったから」
「…某の?」
「真田さん、ちょっと一緒にきてもらえます?」
開かれた門から姿を現した真田さんは、見慣れた朱色の着物姿だった。
明かしていない情報を知りえた自分を心底不思議そうにみる真田さんには答えることは出来ないけれど、ここに来た目的は一つだ。
真田さんのことが知りたくて、卑怯な手を使ったことを悪いとは思わない。
真意など当然理解できないであろう真田さんの手を取り、半ば強引に歩き出す。
向かった先は、俺と真田さんが出会ったあの賭場…ではなく、また別の賭場。
あそこも長くはもった方だったけれど、先日、とうとう役所の手が伸びて潰れてしまったのだ。
「ここは…」
「俺が考えていることが正しいのかどうか確認したくて」
そう言えば、やはり首を傾げるしかない真田さんを伴って、中に足を踏み入れた。
「結局何がしたかったので?至極いつも通りのように感じられましたが…」
「真田さん」
「は」
「これからも、俺と一緒にいてくれませんか」
「……は?」
真田さんの両手を包み込むように握り、真剣な眼差しで訴えかける。
いきなり何を言いだすのかと、真田さんは口を半開きにしたまま固まってしまった。
薄々感じていたことだったが、これで確信できた。俺は、真田さんが傍にいてくれれば勝てるのだと。
まるで勝利の女神のようだ、と言えば気分を害してしまうだろうから口にはしない。
勝てると決まってる勝負に意味はない。けど、そうじゃない。
俺は、何故か俺に勝利をもたらしてくれる真田さんのみている世界に興味があるのだ。
「少々意味が…」
「俺、なんとなく真田さんはイカサマなんてない綺麗な世界に生きてるのかと思ってました」
「…認めたくはござらんが、如何様のない世界などありませぬ。それでも嫌いになれぬから、島殿は賭博を止めぬのでしょう」
いつになく影の落ちた真田さんの表情と、らしくない台詞に目を瞠る。
それでも真っ直ぐに自分を見つめる真田さんから、目が逸らせない。
「某はただ、そうありたいと思っているだけです」
「…うん。決めました。真田さん、俺と勝負してください」
「某、賭博は…」
「違います。武道で、俺と勝負してください。因みに、これがお礼の内容なんで、拒否は認めないっス」
「……」
真田さんが槍を奮う姿を目にした時から、思うところはあった。
そして、今の言葉を聞いて、迷いも何もかもが綺麗に吹っ飛んだ。
自分が何を為すべきか、何を為したいか、ようよう掴めた気がした。まるで雲に隠れていた太陽を見付けたような感覚だ。
「承知」
ニッと笑うその表情は、きっと俺が勝負に出る時のようなそれなのだと思う。
その表情を引き出せたことが嬉しくて、俺も負けじと強気な笑みを浮かべた。
「手加減は致しませぬぞ」
「望むところっス」
場所は、ところ変わって真田さんの屋敷。
互いに獲物を構えて見つめ合う。これは、真剣勝負だ。
「では、真田幸村、いざ参る!」
「島左近、入ります!」
とうに茜色に染まった空が、見るともなしに視界を彩る。
「あーやっぱ強いっスわ、真田さん」
「島殿も、なかなかやるでござるな」
「世辞はいいっスよ。それにしても、その外見でこの強さって、ほんとずるいっス」
「外見は関係ござらん」
そうは言っても、だ。賭場でカモられている姿や、甘味処で団子を頬張っている姿からは想像も出来ないのだから、やはりずるい。
その言動は自身の予想をあっさりと裏切ってくれて、次は何をやってくれるかとつい期待してしまう。
それに、何か、ほっとけないっていうか…。
地べたに仰向けに寝転がったまま、隣で胡坐をかく真田さんを見上げる。
「真田さん」
「?」
「俺を、真田さんの一番近くに置いてください」
「島、どの…何を」
「島左近。俺の人生を、あんたに賭けさせてくださいよ」
予想通り、零れんばかりに驚きを露わにする真田さんが愉快だ。
この人には俺がついてなきゃ、みたいなとこあるし。
人生大一番の大博打。
命をはるなんて、馬鹿のすることだと…思ってたんだけどな。
* * * * *
「旦那、例の件、やっぱりあんたの睨んだ通りでしたよ」
「そうか。誰であろうとも秀吉様を裏切るなど、許されはしない」
闇に紛れ、主の元に謀反の報告を入れる。
何やら書き物をしていたらしい主は、それを聞いた途端に顔を歪め、同様に手元の紙をくしゃりと握りつぶした。
一つの炎に照らされたその背から、ゆらりと黒いものが滲み出す。
「俺様がいきましょうか?」
「いや、悪即斬。私自ら惨殺する」
「はいはい」
これじゃ俺様の仕事がないっての。
愚かなほどに純粋に義を通す主を前に、やれやれと溜め息を溢す。
真っ直ぐに生きたその先を、いつか見られる日がくることを願って。
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