※小→政で佐→幸な政幸?
小十郎と佐助しか出てきません。



「忍が一人こんな所に何の用だ」

佐助が単身やって来たのは奥州の地。
しかもわざわざ小十郎が一人で畑弄りをする時間を狙って、だ。
今日は仕事ではなく、私用なので主さえもそれを知らない。
佐助は屋根の上から畑に居る小十郎を見下げ、口を開いた。

「そんなの勿論竜の旦那のことだよ」
「政宗様の?」

薄々察してはいたが、主の名の登場に小十郎は手を止めて佐助に視線を向けた。

「最近竜の旦那がうちの旦那にちょっかい出してるのは…知ってるだろ?」
「あぁ」

そう、政宗は最近頻繁に上田を訪れては幸村を口説いているのだ。
そして小十郎はそれを黙認している。

「ちょっとしつこ過ぎると思うんだよね」
「……」
「…右目の旦那はさ、竜の旦那のこと好きでしょ?」
「!?」

いきなりの確信を突く発言に、小十郎は驚きに目を見開く。

「俺様も旦那のことが好きなんだよね」
「なっ!?」

だからおたくの旦那が邪魔なんだ、と佐助は小十郎の動揺も余所に淡々と述べる。

「アンタはさ、嫌じゃないの?」
「何がだ」
「愛しい主様が、他の奴を追っかけてる姿を見るのが…さ」

小十郎は驚きはしたものの、何を馬鹿なことをと笑った。

「政宗様の幸せは俺の幸せだ」
「へー、ご立派なこって」
「テメェは違うのか?」
「…俺様だって旦那が幸せならそれでいいんだけどさ」

(なんて、思ってもないけど。旦那を幸せにするのは俺だけでいい)

「なら」
「でも、そうじゃないって言ったら?」
「…何?」
「旦那が竜の旦那のこと迷惑してるって言ったらどうする?」
「そんな筈はねぇっ」

(そう。満更でもないから余計厄介なんだよね)

「アンタから竜の旦那に言ってやってよ、『真田にはちょっかい出すな』…ってさ」

事も無げに佐助は続ける。

「もしこれ以上、旦那にちょっかい出すようなら…」

佐助はそれまでの飄々とした表情から一変して底冷えするような笑みを浮かべる。

「俺様何しちまうか分からないぜ?」
「っテメェ!!」
「勘違いしないでくれよ。あくまで手を出すようなら…だ」

(まぁ、どっちみち敵同士なわけだし、いずれは殺すけどね)

佐助は今度は心の中だけで密やかに笑った。

「竜の旦那が大事なら、ちゃんと守ってあげないとね」
「うるせぇ!!その喧しい口を閉じやがれっ」

再びおどけた調子に戻った佐助に、我慢の限界を突破した小十郎は側にあった畑道具を力一杯に投げつける。

「あらら、本気で怒らせちゃった?」

けれど佐助はそれを軽やかに躱し、尚も飄々とした態度を崩さない。

「ま、言いたいことはそれだけだから」

言うなり佐助は鳥に掴まり空へと浮遊した。

「待ちやがれっ!!」
「嫌なこった」

忠告はしたよ?と念を押した次の瞬間にはもう、佐助の姿はそこにはなかった。

「…くそっ」

小十郎は行き場を失った怒りに震える拳を握り締めて、どうしたものかと考えあぐねていた。




(忍にしちゃ真っ当だろ?)
(だって殺ろうと思えばいつだってできるんだから)



‐‐‐‐‐‐‐‐‐

忍だからなんでもあり、暗殺なんて当たり前、な佐助が正面から切り込み。
でも直接筆頭じゃなくこじゅに行くところがせこい。

今回は珍しく(?)小→政。
小政も好きです。でも幸受の方がもーっと好きです。




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