「やっぱり花より団子だな」

春の麗らかなまさに花見日和。柔らかい春風にそよそよと吹かれながら、行き付けの茶屋で粋に逢瀬を楽しむ…なーんて、相手が相手なわけで。
隣でさも幸せそうに団子を頬張っている姿を見ていたらついつい思ったことを口にしてしまった。

(まぁ、その姿も愛くるしく何の文句もないんだが)

「あ、申し訳ございませぬ…」
「いいや、気にすんなって」

俺の真面目な恋人は、さっきの言葉を自分に対しての不満だと思ったらしく、団子を掴む手を止め(…否、手にする団子が無くなったという方が正しいか)、謝罪を述べる。

(確か数分前まで、皿には20本ほどの団子が積まれていた筈だ)

「いいえ…この幸村、慶次殿の優しさに甘え過ぎてご無礼を…」

(甘え過ぎ?)

(まったく、どこまでも真面目だねぇ)

「幸、よく聞きな」
「はい」
「甘え過ぎ、なんてないんだよ。俺にはどれだけ甘えてもいいんだ」
「しかし、それでは…」
「それにさっきのは…」

真剣な顔でこちらを見つめていた幸に口付けをする。
予想通り目を見開き顔を真っ赤にした幸は、以前ならこんなことをしようものなら「破廉恥なっ!!」と叫び出したものだ。

「慶次殿っ!!」
「俺は、団子より花が好きだな、って言っただけなんだけど」
「花?…某とて、花は好きにござります」

(そうそう。幸はかなりこういうことに疎かったんだ)

「…確かに花は綺麗だが、俺が言ってるのはこっちの花さ」

そう言ってまた幸に口付ける。
今度はちゃんと伝わったようで、再び顔を朱に染めて、恨めしそうに「某は花ではござらん」と照れ隠しのようにぼやいた。

(そんな姿も愛しいんだ)

「花は花でも恋の花ってね」


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初BASARAです。
まさか佐幸より先に慶幸を書こうとは…。
慶次の口調がわからない。




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