綱吉の機嫌があまり良くない。というより、拗ねていると言った方が正しいだろう。

「どうしたの?綱吉」
「……っ」

一度口を開いたものの、言葉を発する事なく、彼はまた口を閉じてしまった。

「言ってくれないとわからないんだけど」

暫くして、覚悟を決めたのか真っ直ぐな瞳を僕に向け彼が口を開いた。

「…オレ、聞いたんです」
「何を?」
「……並盛中の、風紀委員長が町にたむろしてた悪い奴らをやっつけたって」

並盛中の風紀委員長とはもちろん僕のことだ。

「…群れはとりあえず咬み殺してきたから、どれの事かわからないな」

そう、ただそこに群れがあったからそうしただけだ。

「…それでも、辺りの住民の中には感謝してる人も居るそうですよ」
「へぇ。けどそんな事僕には関係な「関係あります!そんな事したら目立つじゃないですか。オレはあなたにこれ以上、有名になって欲しくないのに…」
「どうして?」
「だって、ただでさえ雲雀さんは強くて格好良いのに、これ以上ファンが増えたらどうするんですか!!」
「クスッ可愛いね」

本当に君は可愛いから。
君の周りにはいつも誰かが居て、心配しているのは僕の方。
君に悪い虫が寄らないように、僕が警戒している事も君は知らないでしょう。
まぁ、教えるつもりもないけどね。

「もう、誤魔化さないで下さいっ!オレはそんなのは嫌なんです」
「誤魔化してなんかないよ。大丈夫、僕には綱吉だけだから」
「っ、本当ですか?嘘だったらオレ、泣きますよ」

彼は未だ自分に自信が持てないでいるようだ。
この僕がこれだけ言っているのに。

「本当だよ。僕が嘘ついてるようにみえる?」
「…そうですね。オレ、雲雀さんのこと信じます」

笑顔で、迷いない瞳で見つめながらそんな事を言う。

僕の事を信じてくれるのは嬉しいけれど、自分の事ももっと信じればいいのにと、彼を見ていると思ってしまう。

「綱吉にも僕だけでしょ」

言いながら軽く彼の頭を撫でると顔を赤くした綱吉がぎゅっと抱きついてきて、僕の顔を覗き込む。

「言わなくても知ってるでしょう?」
「けど僕も言ったんだから君も言ってくれないと、不公平だよ」
「うっ……オレにも、雲雀さんだけ、です」
「当然だね」

そして、どちらともなくキスをする。



『あぁ、甘い甘いお菓子。
それは時に魅了する。
 人々は恋い焦がれる。』


‐‐‐‐‐‐‐‐‐
そもそも、雲雀は綱吉がお昼を食べていたところにちょっとした乱入をしたわけで。
実はそこには一緒にお昼を食べていた山本と獄寺もいたわけだ。
そして、甘々な2人に砂を吐くような思いだった事も、この後少しずつそれに慣れざるをえない事も、自分達の世界に入ってしまった2人には知るよしもない事だ。

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ただ「雲雀さんは強くて…」の下りを書きたかっただけなんです




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