※ノイズ誕生日祝い




「あのさ、誕生日なんだけど、何が欲しい?」

どこか躊躇いがちに、蒼葉は上目にノイズを窺う。
ノイズは暫し目を丸くして、ただ何とはなしに頭に浮かんだ疑問を返す。

「…そういうの聞いちゃうんだ?」
「うっ…仕方ないだろ。お前の欲しいもんとかわっかんねーし」

蒼葉は自身の情けなさを呪いながら、唇を尖らせた。

「…あんた」
「へ?」
「あんた以外に欲しいもんなんてねーし」
「それは…無理」

率直な想いを即座に拒否され、ノイズの眉がぴくりと反応する。

「何で?」
「俺はもうお前のもんだから、無理だ」
「……そう」

自分が何言ってるかわかってんのかこいつ…。
荒んでいた心が一気に吹き飛び、まるで当然のことのようにそう言い切る蒼葉に、ノイズの頬に朱が差す。

「で、何が欲しいんだ?」

しれっとした様子で再び問われ、ノイズは考えを巡らせるように宙を仰いだ。

「…じゃあ、プラチナジェイルで食べたあの丸くてしょっぱいやつ」
「は…?……もしかして、たこ焼きのことか?」
「そう、それ」
「何でまたそんなもん…」
「あと、あの甘いやつと、形が変なやつと、それから…」
「待て待て待て!何もいらないとか言ってたのに、急にどうしたんだよ?」
「あんたが俺のもんなら、あんたとの思い出の品?が欲しいなーと思って」

(思い出の品…って言っていいのかあれは)
蒼葉はあんぐりと口を半開きにしたまま思考する。

「駄目?」
「いや、わかったよ」

可愛らしく小首を傾げるノイズに、イエス以外の言葉など返せるはずもなく、蒼葉は仕方なさそうに笑み、了承を返す。

そういう風に祝ってもらったことなどないから楽しみだとノイズが溢すと、蒼葉は目を真ん丸にして、そして哀しそうに顔色を曇らせた。

けれど、すぐにその表情を押し隠して、忘れられない一日にしてやるよと快活に笑った。

期待してる、とノイズは自分よりもことを重んじる蒼葉の唇に優しいキスを落とした。



(その笑顔だけでも十分だけど)




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