気がついたら、暗闇の中。黒子は一人だった。

目の見えない黒子を養うことを両親が放棄したのは、幸いと黒子が物心ついた後のことで、生まれてすぐではなくてよかったと、現実逃避気味にそんなことを考えた。
貧しい家だったらしいので仕方がないと、働けもしない何の役にも立たない自分が口減らしにあうのは当然だと、子供心に理解した。
諦めがつくのは割かし簡単で、寧ろそうせずにはいられなかったのかもしれないけれど。

その後も、目の見えぬ、両親にすら見放された黒子を不憫に思ったのか、救いの手を差し伸べようとするものは何人かいた。
それらは基本的に憐れなものを救う自分、というのが好きな人間がほとんどで。
もとより愛想のない黒子に、せっかく手を貸してやっているのにと人々が手のひらを返すのにそう時間はかからなかった。
黒子も早々に人を頼ることを止め、一人で生きていく術を手ずから身に付けた。
苦労もたくさんしたように思うが、それが自分に与えられた生ならば仕方がないと思っていた。
故に、人を頼るということが未だに苦手で、それが更に周りの人間を苛立たせていることもなんとなくわかっていても、どうしようもなくて。
なのに、何故か会ったばかりの高尾には遠慮なくずけずけとものが言えて、不思議だった。
それは、高尾が自分を対等にみてくれて、その上で心から甘やかしてくれているからなのだと、後になって気が付いた。
黒子も、いつしかそんな高尾のことを信用していたのだ。

――知っていたのだ。

抱き合った時に自分の顔が肩に埋もれる感覚に、高尾が自分よりも背が高いこと。
それなのに、頭上からするはずの声はいつも正面から聞こえてくること。
高尾が、見えてもいない自分と目を合わせるようにして会話してくれていたこと。
彼の優しさと気遣いを知っていたからこそ、何の迷いもなく身を任せることが出来た。
素直に彼を想ってもいいのだと受け入れられた。

他の誰でもない、高尾でなくてはならないのだと。

自分に世界の広さと愛を教えてくれる高尾に、黒子は過言でも何でもなく、彼のためならばこの命すら惜しくはないと思っていた。
そんなことはきっと、彼が許してくれないだろうこともわかっていながら。

妖の力の影響で体に何かしら変化があるかもしれないと彼は危ぶんでいたが、高尾が居てくれるだけで、どんなことが起きても大丈夫だと思える。
嘘のように彼が心の中心にいて。

この想いを、いつか高尾に返せたらと、黒子は常にその方法を考えるのだった。



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