あ、まただ、と思う。

菅原さんの笑顔をみると、心臓の辺りがキュッてなる。
ふわふわして、つられて笑顔になる。
一緒にいると嬉しいのに、なんだかざわざわする。

この気持ちは何なのか、まだはっきりと形にならないそれは掴めなくて。
もどかしいな、と思う。
もうちょっとで届くのに、もうちょっとなのに。

例えば、月島が片手で持ったボールを高々と頭の上に掲げて、「取ってみれば?」なんて嫌味っぽく笑ってきた時みたいな…いや、ちょっと違うか。
それなら、飛べばいいだけだ。
飛べば、もどかしい気持ちも吹き飛ぶ。
じゃあ、飛べばいいのか?
どうやって?

「おーい、日向?どうした?」

腕を組んでうんうん唸ってると、ふいに声をかけられて我に返る。
目の前には不思議そうな顔をした菅原さんがいて、そういえば菅原さんと話してる途中だったのだと思い出す。
失礼なことをしてしまったと慌てて謝れば、菅原さんはきょとりと目を丸くした。
そして、優しい先輩はにっこり笑って、気にするなというように頭を撫でてくれる。
「日向の髪はふわふわで触り心地いいなー」なんて言いながら。
また、胸がざわざわと落ち着かなくなる。
目の前がきらきらチカチカ眩しくて、思わず目を瞑ってされるがままに身を任せる。

ふいに髪を弄っていた菅原さんの手が止まって、もう終わりなのかと名残惜しい気持ちでそっと目を開こうとした瞬間、唇に温もりが触れた。
びっくりして目を見開いたら、間近に菅原さんの顔があった。
目が合ったら、普段優しい色をしたそれがイタズラっ子のように細められる。

「なんだか、日向の全部を預けてくれてるみたいで凄く可愛かったから、つい」

ごめんな、と器用に片目を瞑ってみせた菅原さんに、可愛いと言われたことがじわじわ体中に沁みていって、顔が熱くなる。

きらきらチカチカ。

菅原さんの周りが輝いて見えて、あと少しで曖昧だったその気持ちの形がわかる気がして、そっと手を伸ばした。



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