部活の合間、影山と言い争う日向の姿を横目に見た月島は、思い立ったようにそちらに向かうと、ひょいっと意図も容易くその小柄な身体を持ち上げた。
脇の下辺りをぐっと掴まれ、高い高いをされる子供のような状態で宙に浮いたその姿に、ぷらーんというなんとも間抜けな効果音が聞こえてきそうだ。
いきなりのことに目を丸くしている日向に、月島は薄っすら笑んだ。

「ねぇ、僕のこと好き?」
「はぁ…?何だよ、急に」

ぱちぱちと目を瞬かせた日向が怪訝そうに眉を寄せる。
その横で、影山が驚きに目を瞠っていた。
いつものじゃれ合いが始まったものと特に気に止めていなかった他のメンバーも、月島の口から飛び出した予想外の言葉にざわつき始める。

「答えてよ。言うまで下ろしてあげないから」
「んなっ!?み、皆いるんだぞ!?」
「それが?」

何事かと自分たちに向けられる視線などどこ吹く風で、月島は平然たる態度を崩さない。
その月島の表情を見た側から、集まった視線は外されることになる。
何だ、やっぱりいつものやつじゃないか…と、そんな風に。

「僕のこと、好きじゃないの?」
「……」

いつも嫌味を言ったりからかったりと戯れる、今日はパターンこそ違うが後者であることが、明らかに意地悪く笑う月島の表情から察せられたからだ。

押し黙るように唇を一文字に引き結んでいた日向は、やがて思い切ったようにガッと月島の顔を両手で掴みそのままグイッと距離を縮めると、噛みつかんばかりの勢いで自らの口をその耳元に寄せた。

「好きだ」
「…っ」
「ほら、言っただろ、離せよ。…ったく、何なんだよ」

途端、月島の手から力が抜けて、解放された日向は軽やかな身のこなしで床に着地する。
サッと背を向けた月島にわけがわからないと眉を寄せ、こちらも背を向けて歩きだした。
足音が遠ざかっていくのを聞きながら、月島は赤くなっているだろう自身の顔を片手で覆う。
自棄になって大声で叫ぶか、無理に決まってると暴れるか、そんな反応を予想していたのに――耳元で囁くなんて。
反則だ、と月島は長い息を吐き出した。

自業自得、見事返り討ちにあった月島のそんな姿に、周りのメンバーがにやにやと生暖かい視線を送っていることに本人が気付くのは、そう間もないことだった。



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