「それでも…きっと、俺はずっと黒子っちが好きだよ」
何度断られたって、黒子っちを好きな事を止めるなんて不可能だ。
どんなに時間が経っても、この気持ちは消えない。
黒子っちの普段変化に乏しい表情が、それとわかるほどの驚愕を示す。
「黒子っちを、好きで居続けることを…許してくれるっスか?」
それはまるで命乞いのようだった。
けれど黒子っちは、暫しの沈黙の後、絞り出すように、小さな声で拒絶の言葉を吐いた。
「駄目です。君には幸せになって欲しい」
「俺は幸せっスよ?」
「駄目です」
黒子っちを想って、傍に居られるだけで。
例えこの想いが報われることがなくとも、黒子っちを想っているこの時間は、確かに幸せだ。
再び反論しようとした俺の言葉を遮るように、黒子っちはまた、駄目です、と繰り返した。
頑として拒絶の姿勢を崩さない黒子っち。
「ひどいなぁ…」
泣きそうに歪んだその表情も、俺を思ってのことだってわかる言葉も。
それでも、諦められるわけないのに。
「…わかったっス。何か、ごめんね」
「いえ…」
無理に笑ってみせた。
これが完璧な笑みだったなら、俳優にだってなれただろう。
けど、俺には無理だった。
無理なんだ。でも、そう言う他ないじゃないか。
全く、一欠片だって納得は出来ていない。
けど…だって……だって俺は、黒子っちを悲しませたいわけじゃない。
俺の気持ちを知ってか知らずか、黒子っちは安堵したように息を吐いた。
「けど、もしどうしようもなくなって、誰かを頼りたくなったら、真っ先に俺を頼ってね」
最後の悪足掻きだった。
結果が変わらない事など百も承知だ。
「…はい」
「絶対っスよ!」
そう、本当は分かってる。きっと黒子っちが今後俺を頼ってくれることはない。
俺に弱みを見せるようなことは…ない。
ほんの些細な期待もさせないように…。
黒子っちは優しくてひどい。
俺のことを考えてくれてるのは分かる…けど、俺はきっと、それでも一生黒子っちのことが好きだ。
いつか黒子っちが俺の気持ちを重いと感じて離れていってしまう前に、先手を打ったつもりだったのに。
ちゃんと黒子っちの性格を考えてみればわかることだったのに…。
あぁ、告白なんてしなければ良かった……。
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