「皆、何お願いしたんスか?」

年明け、キセキ達が揃って赴いた初詣。
お参りを済ませ真っ先に口を開いたのは黄瀬だった。

「俺は、金持ちになれますように、だな」

お決まりの台詞に真っ先に答えたのは青峰。

「俺は、お菓子がいっぱい食べられますようにって」
「フン。人事を尽くして天命を待てばいいのだよ。強いて言うならば、このままおは朝が続きますように、だな」

紫原、緑間と続き、後は黒子と赤司だ。

「僕は…身長が伸びますように、と」

ぼそりと溢された黒子の言葉に、黄瀬が大きく反応する。

「黒子っちは今のサイズが可愛いから大きくならなくていいっスよ!」

黒子にしてみればムカつくことこの上ない発言をしながらどさくさに紛れ黒子に抱きつこうとした黄瀬を、青峰が突き飛ばす。

「何するんスか、青峰っち!」
「テメーこそ何しようとしてんだよ」
「俺は、ただ黒子っちのこのサイズ感を堪能しようとしただけっスよ」
「アホか」
「黄瀬ちん変態っぽ〜い」
「馬鹿め」
「涼太、ハウス」

それぞれから詰られ、当の黒子からは冷ややかな眼差しを向けられ、黄瀬は涙目になりながらわなわなと体を震わせた。

「な、そ、それより、何で皆そんなにバラバラなんスか?ここは、いつまでもこうして六人一緒に居られますように…とかじゃないの?」

反撃とばかりに、自分の欲に忠実な皆の願いを指摘した黄瀬に、一様に目を丸くするキセキ達。
何を言ってるんだこいつは、という視線を一身に受けて、黄瀬は更に目を潤ませた。

「馬鹿め」

そんな黄瀬に追い打ちをかけるように、緑間は先程と同じ言葉を口にした。

「なっ」
「ほ〜んと、黄瀬ちんておバカさんだよね〜」
「ばーかばーか」
「あ、青峰っちには言われたくないっス!」
「あぁ?」

紫原、果ては青峰にまで馬鹿呼ばわりされ、流石に青峰には劣らないと負けじと言い返す。

「黄瀬君」

今にも青峰と火花を散らそうとしていた黄瀬の名を黒子が呼び、黄瀬は青峰の存在など忘れたかのようにそちらを向く。

「黒子っち…」
「君は馬鹿ですね」

縋るように見た黒子にまで馬鹿にされた。黄瀬のショックは大きく、涙はもう目尻から溢れる寸前まできている。

「そんなこと、お願いするまでもないじゃないですか」
「へ?」

しかし、次いだ黒子の言葉に、黄瀬は目を丸くし、涙は辛うじて目尻に溜まったまま止まる。

「テツヤの言う通りだ。誰に願わずとも、僕達が未来もこうして共にあるのは当然のことだろう」

それまで黙っていた赤司が、揺るがぬその瞳を細めながら言い放つ。
それを受けた他のメンバーも、同意するように笑んだ。
漸く理解した黄瀬は、一度止まったはずの涙を堪えきれず結局溢れさせてしまった。
事も無げに告げられた言葉は、しかし理解すれば何と恥ずかしいことだろう。何故平然と言い切れるのだろう。それは、願うまでもなく当然のことなのだと。

「だって僕らは、キセキだからね」

****

それから、泣きやんだ黄瀬はふとあることに気付き赤司を見た。

「そういえば、赤司っちの願い事って何だったんスか?」

他の皆の願いは聞いたが、そういえば赤司の願いはまだ聞いていなかった。
皆の視線が赤司に向かう。あの赤司の願いとは何か、と興味津々といった様子だ。

「秘密だよ。願いっていうのは、他人に話してしまうと叶わないらしいからね」
「え?」

それを聞いたキセキが凍りつく。
その中でも、平静を装った黒子の拳が微かに震えているのを見てとって、黄瀬は慌てた。

「く、黒子っち…ごめん…でも黒子っちはほんとそのままのサイズで…」

と、フォローする筈が余計なことを言ってしまった黄瀬は、黒子の冷たい視線を浴び、すぐに目を逸らされてしまう。

「く、黒子っち…」

追い縋ろうとする黄瀬に、すかさず他のメンバーからの恨み節が飛び、黄瀬はまた涙目になりながらひたすら謝罪の言葉を述べた。

新年早々から何も変わらないキセキの様子に、傍観者を決め込みながら、赤司は人知れず笑みを溢したのだった。




赤司の願いは黒子と同じとかだったら可愛いと思います。



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