炎に煽られ輝く金色(こんじき)。
橙の光に彩られたその眩しさに目を細める。
天使かはたまた炎の精のように、その姿は美しかった。
ぼーっと見惚れていると、目の前にたおやかな手が差し出される。

「ボサッとしてるヒマはねえぞ」
「あ…」

そうだ。どこか遠い感覚で見ていたその人は、実際にこの世界に存在するのだ。

「なん…で」

こんなところにいてはいけない人だ。ここで共に眠ることは許されない人だ。
漸く理解して信じられないものを見る目を向ける俺に、その人は不思議そうな顔をしながらしゃがみこんだ。
目線の高さが同じになる。炎に染められた瞳がキラキラと自分を見つめてくる。熱を持った手の平が頬に触れ、顔が近付いた。
スローモーションのように感じられたそれはまるで夢の中の出来事で。

「ジャン、さ……」
「また変なこと考えてんだろ、お馬鹿さん?」
「あ…えと……」

キスをされた。これも現実だ。なのに今は全てが幻のように感じる。

「ホラ、立てって」

動かない俺に痺れを切らしたのか、腕を掴まれ引っ張り上げられる。といっても、自分の方が背は高いので完全に立つには自ら動かなければいけなかった。

「行くぞ。それとも、このまま俺も殺す気か?」

そう言ってジャンさんは意地悪そうな顔で笑った。
あぁ、俺が動かなければこの人も死んでしまうのか。俺を助けるために来てくれたのだ、自分一人逃げるという選択肢はこの人の中にはない。
それがとても嬉しい。
一緒に眠るのも悪くはないとついつい思ってしまった自分を殺してしまいたい。
けどそれは出来ない。
それでは彼がせっかくこんなところまで来てくれた意味が無くなってしまう。

「貴方を…死なせたり、しません」
「おう、よろしくナ」
「はい」

手に手を取って、炎が作るアーチをくぐり抜けた。
炎なんかよりもずっと、俺の目に焼きついて離れない、眩しい人。
本物の天使のように、いとも容易く俺の心を照らしてくれる人。
炎を抜けても、その人は変わらず輝いていた。






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