吐き出す息は白くて、

たぶん頬っぺたも鼻も赤くなっていて、

無機質な塊にじんわりと熱を奪われた手はもう自分の言うことを聞いてくれない…

凍てついた手は引き離せないほどじゃないけど、ここから離れる気はさらさら無かった

心も、何もかもが凍ってしまった様だった―――…



あれは周りから見れば些細なことだったかもしれない。あの人が"あぁ"なのは今に始まったことじゃない。知っていて好きになったのは自分だ。
"人間"を愛するあの人の、他人からしてみれば"狂った"愛情表現。僕の反応を試すためだけの行動。

誰かに話を聞いて欲しい、誰にも話したくない。矛盾だらけの自分の心を持て余して。

こういう時、頭に瞬時に浮かぶのは、静雄さんの顔だった。あの不器用で優しい人は、きっと僕の話を聞いてくれる。けれど、今あの人に泣き付くことは出来なかった。そんなことをしたら、きっと……同じになってしまうから。

公園のブランコを、漕ぐわけでもなく、椅子として利用する。
時折ちゃらりと鎖が音を立てて、自分の迷いが揺れているようだ。
ふと見上げた空はしんと澄んでいて、呑み込まれてしまいそうなほどに広がるそれに、ちっぽけな僕は内側から震えた。




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