とろいというのはかなり損なのだな、とこの短い人生で十二分に理解させられた。頭の回転が遅いから、人より考えるのに時間がかかる。答えを出すのに苦労して、どんどんと考えることが億劫になってしまったから、私は考えることが苦手だった。水上曰く、私はぽけぽけしている、らしい。ぼけぼけではないのだそうだ。私と違って頭のいい水上の口から「ぽけぽけ」だなんて可愛い音が発せられるのが少し面白かったことだけはよく覚えている。それ以外のことはよくわからなかった。
 水上から好きだと告白されたとき、私は三秒間を開けてから「わかった」と返事した。実際は何もわかっていなかったのだけれど。コクリと頷いて、そうしておそらく私たちの交際はスタートしたのだ。おそらく、というのも、なんというか、水上が私のことを好きになるなんて思えなかったのだ。何せ私は自他共に認める「とろい」人間で、頭も弱いし考えるのが苦手だから、水上みたいな賢い人が私のことを好きになるなんて信じられないのである。むしろ、こういうタイプのことは嫌いなのではないかと思っていた。水上が私の世話を焼く理由もよくわからないし、告白してきた理由もわからないけれど、多分知り合いの面倒を見ないなんて良心が痛むだとかそういう腐れ縁で手近だったからとかなんじゃないかなとおもう。そして悲しいかな私は世話を焼かれたおかげでまんまと水上敏志という人間への恋心をすくすくと成長させていた。いつかめんどくさくなるまで、そばに置いてくれていたらそれでいいと思う。


愚者の長考



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