good afternoon my steady


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時計の短針が水瓶座から魚座に跨ごうかと言う頃に階段を駆け下りて来る小宇宙を感じ、シャカは結跏趺坐をしたまま少し船を漕いでいた意識を浮上させる。
頃合い的にそれが誰か、否、この隠しもしない慌てっぷりと太陽のような底抜けに明るい小宇宙で判別がつく。

「ムウーーッ!!・・・あれ?シャカか」
「本当に君は四六時中やかましい男だな・・・もう少し落ち着きと言うものが持てぬのかね」
「な、何だよ・・・?顔合わせるなり失礼なヤツだな・・・・・・っていうかムウ!ムウはどこだ?」
「あれなら君が土壇場で頼んだ修復作業を徹夜で終わらせて、今はぐっすり眠っている」

包み隠さずそう言うと、修復を頼んだ張本人である蠍座のミロはばつが悪そうに頭を掻いた。
やはり彼自身にも反省は少なからずあるらしい。

「そ、そうなのか・・・・・・やっぱ怒ってたか?ムウ・・・」
「察しが付くならムウが目覚めたら頭の一つでも下げる事だな。因みに今度同じような事があったら、君の血をその場で全て採血するからそのつもりでいろ、と本人から伝言を預かっているぞ」
「・・・うん、はい・・・気を付けます・・・」
「私に言ってどうする・・・。まあいい、聖衣を取りに来たのだろう。ついて来たまえ」

ミロの返答を待つこともなく、シャカは踵を返すと白羊宮の奥へと引っ込む。
それをミロが慌てて追いかけた。
女神への謁見は午後1時からで、準備も含めるとあまり時間が無い事をシャカ自身も何となく察していてくれたのだろう。

「・・・お前変わったよなぁ」

独り言のつもりが気付けば石畳に反響するような声になってしまい、ミロはまずったかと口を抑える。
だがシャカは特に怒るような素振りは見せず、前を歩いたまま「何がだね」、と問うに留まった。

「いや、以前のお前なら『どっかにある筈だからとっとと持って行け』とか言ってそうな気がして」
「勝手に人の反応を決めつけるのは失礼に値すると、君は覚えておくべきだ。大体以前も何も私は昔から私だ。変わらんよ」
「そうだな。お前が変わったんじゃなくて、俺が変わったのかな」

自分でも言っている意味が良くわかっていないような顔で、ミロは頭をひねりながら言う。
その様子を振り返って見たシャカは呆れたように溜息を吐いた。

「・・・くだらん問答を考えてる暇があったら、次にムウに会った時に言う懺悔の言葉でも考えておくのだな。・・・ほら、この部屋の中にあるはずだ。女神に不敬無きようさっさと持って帰りたまえ」
「ああ、ありがとうな!シャカ」
「ムウに言え」

若干吐き捨てるように言って、シャカはその場から早々に立ち去る。
そこまで入り組んだ廊下ではないからミロは迷わず帰るだろう。
彼をわざわざ見送ってやるほどの役回りは自分には無いと判断したのだった。
それと同時に、聖域中へ正午を告げる鐘の音が響く。
シャカの足はそのままムウの居室へと向かっていた。


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