ネト臨 | ナノ

※チャットに投下した物を加筆


「んっ、あっ…」

きつく寄せられる眉に唇を落とす。一体いつからだったろうか。臨也の脳はネットに浸食され、一日の大半を眠って過ごすようになった。時折漏れる苦しげな声は、彼の囚われている夢が安らかでないことをはっきりと示している。蜘蛛の巣のように張り巡らされた電脳の世界で、絡めとられた臨也がどういう思いをしているのか。少しでも力になろうと、彼が「こっち」側にいる時に何度か尋ねてみたが、彼は頑なに答えようとしなかった。

「いや、ごめんなさいっ、流さないでっ!」

不意に、臨也の声が高くなり言葉にはっきりとした輪郭がついた。その後に続けられた名前は、良く聞こえない。人であるのか、或いはインターネット回線なのか。なあ臨也、お前をこんなふうにぼろぼろにするのはどんな奴なんだ。俺には手の届かない次元で、何をされたっていうんだ。

無力な腕は、彼を揺さぶり起こすことすらできない。ただ閉じられた瞼を伝う雫を拭って、彼が目覚めるまで傍にいるだけ。不甲斐無さに唇を噛んだ。こんなにも近くにいるのに、臨也の唇は俺の名を歌わない。情けないが、彼の為にしてやれる事はこうして抱きしめる以外何も思いつかないないのだ。だから俺は待っている。臨也がネットに走らなくても、すぐ近くで彼を見ている人間がいる事に、実体のないそれらにこんなにも嫉妬を覚える俺がいることに気づくまで。蝕まれたその心の、痛んだ部分を俺が覆ってやれるようになるまで。負けるものか、この身体は俺の胸にあるのだ。

さらさらと黒髪を指で梳いて、抱きしめる力を強くした。大丈夫だ、俺がいるから、深く沈んだ意識に囁く。

どうか、どうかこの声が届きますように、と。




深夜1時のテンション